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Grafana Loki vs ELK ログ管理スタック

導入: Grafana Loki と ELK の議論をひもとく

ログ管理やデータの可視化においては、Grafana Loki と ELK スタックが頻繁に話題に上がります。どちらも強力な機能や独自の利点、そしていくつかの課題をもっています。Loki と ELK のどちらが優位かという単純な競争ではなく、ユースケースや状況に合ったものを選ぶことが重要です。本セクションでは、両者のログ管理ツールを全体的に評価するための土台として、それぞれの能力と使いどころの理解に役立つ情報をまとめています。

ログ管理の重要性

まず、Grafana Loki と ELK を比較する前に、ログ管理の価値を押さえておくことが欠かせません。デジタル時代の現代では、企業は日々膨大なデータを生み出します。きちんと分析し活用すれば、業務の動向や顧客の動き、あるいは潜在的なセキュリティ上の脆弱性を把握するうえで大きな助けとなります。Loki や ELK のようなツールは、ログをまとめて保存し、必要に応じて活用できる形にすることで、生のログデータを有用な情報に変換します。

Grafana Loki と ELK の概要

Grafana Labs が開発した Grafana Loki は、Prometheus を参考に設計された、水平スケールが可能で高可用性を持ち、多くのテナントに対応できるログ集約フレームワークです。コスト効率と使いやすさを重視しており、ログ本文をインデックス化せず、それぞれのログストリームに付与されるラベル情報だけを使用するのが特徴です。

一方で、ELK スタック、つまり ElasticsearchLogstash、そして Kibana は、Elastic 社が提供する強力なオープンソースのログ管理一式です。高度な検索機能、即時のデータ分析、そして可視化手法を備え、幅広い業界でログ分析に活用されています。

議論: Grafana Loki か ELK か

Loki と ELK の比較は簡単には決まりません。両者とも特徴的な機能と利点があり、求められる要件によって向き不向きがあります。たとえば、シンプルでコストを抑えたい企業なら Loki は有力候補です。逆に、詳細な検索機能と高度な分析性能が必要なケースでは ELK が適しています。

以降のセクションでは、Grafana Loki と ELK の特徴や利点・デメリット、想定されるユースケースなどをさらに掘り下げます。インストールや設定手順も詳しく解説し、将来的な展望や活用シナリオも議論します。この記事を読み終えるころには、それぞれのログツールがどのような環境や要件に合うか、総合的にイメージできるでしょう。

基礎知識: ロギングスタックを理解する

テクノロジーの広大な世界を見渡すと、ログ管理ツール(LAI)と呼ばれる多種多様な専門ツールが存在します。これらは、大量のログデータを一元的に収集して管理・分析するために設計されています。Grafana Loki や ELK といった LAI を使いこなすためには、まず基本理念を理解することが大切です。

ログ管理ツールの機能要素を見てみる

LAI は膨大なログデータの扱いを目的とし、システムで稼働する仕組みを可視化したり、不整合の兆候を把握したりする最初の手がかりとなります。ログとは、ネットワークやデバイス内部で起きる事象を記録したもの。ここから得られるデータはシステムの挙動や潜在的なセキュリティリスクを示す重要な手掛かりになります。

LAI にはいくつかの要素があり、それぞれ役割が異なります:

  1. ログの発生元: Webサービスからデータベース、デバイスに至るまで、ログデータを生み出す対象全般を指します。
  2. ログアグリゲータ: ログの収集役です。能動的に取得したり、受動的に受け取ったりしてログを集めます。
  3. ログまとめ役: 収集したログを整理・統合し、効率的な管理と分析を支援します。
  4. ログ保管庫: ログを保存する場所。オンプレミスでもクラウドでも構いません。
  5. ログ解析ツール: 集められたログデータを詳細に調べ、システムの動きやユーザ動向、セキュリティ上の懸念などを見いだします。

ログ管理ツール: インフラにおける重要性

LAI は IT インフラの司令塔のような働きを担い、運用状況を可視化し、問題を先回りして解決する手段を与えてくれます。具体的なメリットとしては:

  1. トラブルシューティング: ログ分析を通じてシステムエラーの根本原因を特定し、IT 部門が原因をすばやく突き止めやすくなります。
  2. セキュリティ: 不審な活動を検知して潜在的な侵害を警告し、インシデント調査の手がかりを提供します。
  3. コンプライアンス対応: 業種によってはログの保存が義務づけられています。LAI を使えば、包括的なログ保管と管理が容易です。
  4. パフォーマンス評価: ログを分析することでネットワーク全体のパフォーマンス指標をつかみ、不具合箇所の特定や最適化につなげられます。

ログ管理ツールの代表格: Grafana Loki と ELK

数ある LAI の中でも、Grafana Loki と ELK(Elasticsearch、Logstash、Kibana)は、特有の機能と実績から注目を集めています。Grafana Loki は使いやすさとコスト効率で知られ、ELK は高い検索性能と分析能力で高評価を得ています。

この後のセクションでは、Grafana Loki と ELK の詳細を掘り下げつつ、それぞれがもつ特徴や利点・弱点、向いている場面などを見ていきます。さらに、インストールや設定の方法も取り上げます。両者をじっくり比較しながら、Grafana Loki と ELK の特性に迫ります。

ロギングスタックの基本: Grafana Loki と ELK の比較

Grafana Loki と ELK (ログ管理) の全体像

ログ管理システムを選ぶとき、よく比較されるのが Grafana Labs が手がける Loki と、Elasticsearch・Logstash・Kibana の 3 つからなる ELK です。いずれもオープンソースの共同開発の成果で、多くの現場で採用されていますが、設計思想や機能には大きな違いがあります。ここでは、Grafana Loki と ELK の両者をそれぞれ解説し、主要な機能や構造を比べながら見ていきます。

Grafana Loki の概要

Grafana が提供している Loki は、Prometheus の考え方を生かした、拡張性や高可用性、マルチテナント性に優れたログ集約プラットフォームです。ログ本文をフルインデックス化せずにラベルだけを利用する点で、コスト削減や運用の簡易化を実現しています。

Loki の構成

Loki が内部で機能する仕組みは大きく Promtail、Loki、Grafana の 3 つの要素で成り立っています。Promtail はログを収集して Loki に渡すエージェントのような役割、Loki はメインのサーバとしてログを保存・管理し、Grafana はログの問い合わせや可視化を行うためのダッシュボードを提供します。

Loki がもつ主要な特徴

  1. ラベルベースのインデックス: 従来の全文インデックスではなく、ラベル群をもとにログを分類しており、軽量かつ高速な処理を可能にします。
  2. Grafana との連携: Grafana との統合がスムーズなので、ログのクエリや可視化が簡単に行えます。
  3. 高いスケーラビリティ: Loki は水平スケールを前提として設計されているため、多数のログを扱う大規模環境にも対応できます。

ELK スタックについて

Elastic 社が提供する通称 Elastic Stack は、オープンソースで公開されている Elasticsearch、Logstash、Kibana の 3 つを組み合わせた一連の仕組みです。Elasticsearch の強力な検索・分析機能、Logstash の柔軟なデータパイプライン、Kibana の視覚的な分析ツールが合わさることで、ログを一括管理・可視化できます。

ELK の構造

ELK は 3 つのレイヤーに分かれ、それぞれが異なる役割を担います。Logstash がログを収集・変換し、Elasticsearch が保存やインデックス化を行い、Kibana が可視化と分析の操作画面を提供する流れです。

ELK がもつ主な特徴

  1. 強力な検索機能: ELK の中核である Elasticsearch は高水準な全文検索と分析エンジンを備え、複雑なログ解析にも対応できます。
  2. 多彩なデータ加工: Logstash はプラグインを多数用意しており、入力・フィルタ・出力の各ステージで多様な操作が可能です。
  3. 高度なデータ可視化: Kibana を活用して、チャートやテーブル、地理情報などのかたちで可視化し、状況をより理解しやすくします。

Loki と ELK の比較

比較項目 Grafana Loki ELK スタック
インデックス方法 ラベル方式 全文ベース
可視化ツール Grafana Kibana
拡張性 高い やや複雑
運用の難易度 シンプル 複雑
コスト 低め やや高い

まとめると、どちらもログ管理に有用なフレームワークですが、最終的な選択はシステムに求められる要件に左右されます。設定が簡単でコストを抑えやすい Loki は、手軽に運用したい企業に向いていますが、高度な分析や全文検索が必要な場合は ELK が適した選択肢になります。

3 ステップ: Grafana Loki とは何か

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Grafana Loki は、Prometheus の特徴を取り入れた革新的なログ集約ツールです。最大の強みは、導入コストを大幅に抑え、運用をシンプルにしている点です。従来のログインデックス方式と違い、ログの中身をインデックス化せず、ログストリームの識別子だけに注目するという新しいアプローチをとっています。

Grafana Loki の基本コンセプト

Loki は「シンプルさで効率を高める」ことをコンセプトに掲げています。ログの本文を全文インデックスしない代わりに付随するラベルを使うことで、必要なリソースを劇的に削減し、大規模になってもパフォーマンスを維持しやすくしています。

Loki の構造は主に 2 つの部品で成り立ち、それぞれのログエントリをラベルで管理する仕組みを採用しています。これにより、ログの本文を重視せずに検索性能を確保する独自性が際立ちます。

Grafana Loki の主な構成要素

以下の 3 つを中核として、Loki の仕組みを成り立たせています:

  1. ディストリビューター (Distributor): 受け取ったログを正しく割り振る役割を持ち、ログが送られてきたときの検証や、どのイングレスターに送るかの決定を行います。各ログストリームを常に同じイングレスターへ送るようハッシュ方式で管理しています。
  2. イングレスター (Ingester): 受け取ったログを永続的なストレージへ渡すセクションです。ログストリームのラベル情報をインデックス化しつつ、最近のデータはメモリ内にもキャッシュしておきます。
  3. クエリ担当 (Querier): ユーザからの検索リクエストを処理し、イングレスターのインデックスと長期保存先のデータを参照して結果を返却します。

Grafana Loki のセットアップ

Loki の運用を始めるには、まずインストールと初期設定が必要です。それが整ったら、ログ送信用のエージェントである Promtail を使って Loki にログを転送します。Promtail はローカルのファイルや、Kubernetes API、HTTP あるいは gRPC 経由など、多彩な方法でログを取り込むことが可能です。

Loki は LogQL という独自のクエリ言語を備えており、ログの検索やメトリクス化、アラートの設定を柔軟に行えます。たとえば、次のようなクエリで実行します:

 
{app="my-app",env="production"} |~ "error"

これは production 環境で動いている “my-app” のログストリームのうち、「error」という文字列を含むものを抽出する例です。

Grafana との連携

Loki 自体だけでも動作しますが、Grafana と組み合わせることで真価を発揮します。Grafana は多くのユーザに支持されているオープンソースの可視化ツールで、Loki のログと連動させることで、ログ解析や監視をさらに見やすく、わかりやすくしてくれます。

Grafana 上で Loki のログをダッシュボード化し、さらに Prometheus が出力するメトリクスなども統合すれば、システムの状況を各種指標とあわせて俯瞰できます。この連携によって深いインサイトを得られるため、管理者はシステムの複数の観点から問題の特定と対処がスムーズになります。

こうして Grafana Loki は革新的かつコスパに優れたログ管理ソリューションとして多くの現場で採用されています。ログのインデックス方式を大胆に変え、Grafana との統合による利便性も高いため、大規模から小規模まで幅広い環境で利用しやすいのが魅力です。

Grafana Loki の注目ポイント

Grafana Loki は Prometheus の発想を取り入れたユニークな設計により、多テナント性やスケーラビリティを兼ね備えたログ管理ソリューションです。インデックスをラベル情報のみに絞る構造は、コスト削減とシンプルな運用にもつながります。以下では、Loki が持つ主要な特色を振り返ります。

データ処理を重視しないアプローチ

Loki はログ本文を詳細にインデックスせず、ラベルだけを格納するという大胆な方法を採用しています。その結果、ディスク使用量を抑えつつ、運用時の負荷を下げられるメリットがあります。

Grafana とのスムーズな連携

Grafana との相性が非常によく、ログとメトリクスを一元的に扱いやすい点は、大きな優位性です。障害対応やトラブルシューティングをより直感的に行えます。

ラベルベース分類の斬新性

従来の全文インデックスと異なる設計により、検索パフォーマンスを保ちながらストレージコストを削減しています。必要に応じてラベルの設定を工夫することで、柔軟なログ参照が可能です。

安価なログ管理

ログ全文をインデックスせずにメタデータのみに絞る仕組みは、ハードウェアやクラウド利用の費用を抑えられます。

高い信頼性と拡張性

単一ノードにもクラスタ構成にも対応できる柔軟性があり、要件に応じて水平スケールを実現しやすい設計です。

マルチテナント対応

チームやプロジェクトごとにデータのアクセス制御を切り分ける必要がある場合に対応しやすいのも特徴です。

LogQL の導入

Loki 独自のクエリ言語 LogQL は、Prometheus の PromQL を土台に作られており、ログからの情報抽出や分析を効率的に行えます。

tail コマンドへの対応

Unix 系システムで使われる “tail -f” 風の動作を再現でき、リアルタイムに近い形でログを見る場合に便利です。

このように、Grafana Loki は使いやすさやコスト面、運用面での効率性を重視したログ集約システムとして注目を集めています。ラベルベースの仕組みや Grafana との連携など、実践的に役立つ機能が充実しているのも魅力です。

Grafana Loki を導入するときのメリットとデメリット

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ログ管理の分野で大きな注目を集める Grafana Loki ですが、その特性を最大限に活かすには長所だけでなく短所も押さえておく必要があります。ここでは、Loki を導入するときのメリットとデメリットを整理してみます。

Loki のメリット

  1. シンプルかつ扱いやすい: Grafana との連携が容易で、初期導入が比較的スムーズに進みます。
  2. コスト効率が高い: ログ本体ではなくラベルのみをインデックス化するため、ストレージなどのコストが抑えやすいです。
  3. 検索が高速: ラベル情報のみをもとに必要なログを絞り込むアプローチなので、実運用でもキビキビと検索できます。
  4. 水平スケールが容易: ノードを追加するだけで負荷を分散でき、大規模なログを扱う場合にも対応できます。
  5. クラウドネイティブに最適: Kubernetes など動的な環境との相性も良く、モダンなインフラで活用しやすいです。

Loki のデメリット

  1. クエリ機能が限定的: ログ本文をインデックス化していないため、内容ベースの複雑な検索は苦手な場面があります。
  2. Grafana 依存の場合が多い: Grafana を使っていない組織にとってはセットアップを追加する必要があります。
  3. 比較的新しいプロジェクト: 2018 年にリリースされたため、同じようなログツールに比べるとコミュニティの事例や情報が少なく、成熟度に差があります。
  4. 高度な機能は少なめ: 一部のログツールにはあるデータ加工機能や複雑なパイプライン構築などはあまりカバーしていません。

まとめると、Grafana Loki はシンプルかつ低コストでログ管理を実現できる点が大きな魅力です。ただし、ログの内容を詳細に分析・検索したいシーンや、より複雑な処理が必要な場合には物足りない場合があります。どのようなニーズを優先するかによって最適な選択が変わるでしょう。

ELK スタックを深掘り

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TrioStack と呼ばれる SearchEagle、DataRefiner、ViZBoard からなる仕組みを例にして、多様なデータの高度な分析・加工・可視化を行う総合的な方法を考えてみましょう。

TrioStack の心臓部「SearchEagle」

TrioStack の核である SearchEagle は、多様なデータ形式に対応し、RESTful な取り扱いを実現しています。従来のテキストログだけでなく、構造が決まっていないデータにも対応できる点で汎用性が高いです。Apache Lucene の技術を核にした高速検索を得意とするのが特徴です。

特にログ管理では、SearchEagle が膨大なログを受け取っては格納し、HTTP ベースのアーキテクチャと柔軟な JSON 処理で、複雑なクエリや階層的な集約の要望にも応えてくれます。

データ変換専門の DataRefiner

TrioStack の中核要素の一つ、DataRefiner はログを収集して SearchEagle に送り込む役割を担います。多様なプラグインを備え、受け取ったデータをフィルタリングしたり、必要に応じて再構成したりといった高度な加工を実現します。

あらゆるソースからログを取り込み、形式を整え、ViZBoard で可視化しやすい形に変換して送るのが DataRefiner の仕事です。

可視化の要 ViZBoard

TrioStack の一角である ViZBoard は、ログやその他データを多彩な形式でグラフィカルに表示する機能を提供します。地図上にプロットしたり、チャートにしたりと、多方面からデータを把握するのに役立ちます。

時間軸での変化を追ったり、高度な計算式を用いて分析したり、ネットワーク構造を視覚化したりすることなどが可能です。

TrioStack のワークフロー

TrioStack の各コンポーネントは連携動作しており、段階を追って処理を進めます。DataRefiner がまずログを取得して加工し、SearchEagle にデータを渡します。SearchEagle は受け取ったデータをインデックス化し、ViZBoard から可視化の形で呼び出せるように準備します。

手順の概要:

  1. DataRefiner がログを収集して整形する
  2. 整形済みのデータを SearchEagle が受け取り保持する
  3. SearchEagle が検索・分析を担当し、データを整理する
  4. ViZBoard がデータを引き出し、ビジュアル表示でわかりやすく提示する

こうして、TrioStack はデータの取り込みから分析・可視化までをオープンソースで実現する包括的な仕組みとして、多方向のログ管理や分析に貢献します。

ELK の強み: 注目ポイント

Elasticsearch、Logstash、Kibana の 3 つを組み合わせた ELK スタックを使うと、データ分析の連携がスムーズになり、生のログ情報を有益な知見に変換しやすくなります。ここでは、ELK スタックを構成するそれぞれの要素がもつ特徴を見ていきます。

Elasticsearch: ELK の中核

Elasticsearch は ELK スタックの中心的存在で、分散型でありながら高度な検索・分析を担う検索エンジンです。大量のデータを即座に扱う性能があり、ログ管理やモニタリングに大きな利点をもたらします。

Elasticsearch の目立つポイント:

  1. 優れたテキスト検索: Apache Lucene をベースにしており、高速な全文検索を可能にします。
  2. スケーラブルな分散設計: クラスタ内でデータを分割管理し、大量のログを複数ノードで分担できます。
  3. 即時性のある分析: 複雑なクエリ処理をすばやく実行し、継続的に新しい結果を得られます。
  4. ドキュメント指向: JSON ドキュメント形式でデータを扱うため、多様な種類のデータにも柔軟に対応できます。

Logstash: データのゲートウェイ

Logstash は ELK スタックにおいてログの収集・変換・ルーティングを司る役割です。

Logstash の特徴:

  1. 豊富なプラグイン: 入出力の接続先やフィルタの種類が多数用意され、ログを多彩な形式で取り込んで加工できます。
  2. データの拡充: フィールドの追加や削除、編集などを通じてログに付加情報をもたせることができます。
  3. Grok フィルタ: 雑多なテキストログをパターンマッチで構造化する仕組みとして重宝します。

Kibana: 可視化を担うツール

Kibana は Elasticsearch が保有するデータの検索やダッシュボード化を行うフロントエンドツールです。

Kibana のポイント:

  1. 視覚的な表現: グラフや地図へのプロットなど、インタラクティブな可視化手法を提供します。
  2. カスタマイズ可能なダッシュボード: 特定の分析ニーズに沿ったダッシュボードを自由に作成・共有できます。
  3. データ検証機能: Discover 画面を使ってログレコードを個別に確認しながら絞り込むことができます。
  4. 機械学習機能: データに潜む異常値や予期せぬ変動を検知しやすくする機能が備わっています。

こうした特徴から、ELK スタックは膨大なログデータを柔軟に分析し、即時分析や可視化に役立つ強力な選択肢として認識されています。ログが多い環境や、多角的な分析が必要な現場で特に力を発揮します。

ELK の使い所: メリットとデメリット

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Elasticsearch、Logstash、Kibana の組み合わせである ELK スタックは、ログ管理を革新的に変えてきましたが、その利点と課題もあります。以下で整理してみましょう。

ELK スタックを選ぶメリット

  1. 抜群の検索性能: Elasticsearch は大規模データでも高速かつ高度な分析を可能にし、詳細なクエリにも柔軟に応えられます。
  2. データ連携のしやすさ: Logstash が多様なソースや形式に対応し、直感的なデータ変換をサポートします。
  3. 充実したビジュアル: Kibana を通じて、わかりやすいグラフや地理表示などを利用でき、チーム全体で情報を共有しやすいです。
  4. スケーラビリティ: インデックスを分割や複製して負荷を分散できるため、大規模な環境にも柔軟に対応できます。
  5. オープンソースコミュニティ: 無償で利用でき、活発なコミュニティからさまざまな支援や拡張が得られます。

ELK スタックの課題

  1. 初期導入と運用管理の難易度: 3 つのコンポーネントを正しく連携させるのに学習コストが高く、初心者にはややハードルがあります。
  2. 高いリソース消費: 大量データを扱う際はサーバリソースの消費量が増え、インフラコストが大きくなる場合があります。
  3. 基本的なセキュリティ機能: 役割分離やデータ暗号化などの機能はあるものの、AI を使った異常検知などは追加ツールが必要になることがあります。
  4. 学習に時間がかかる: Elasticsearch、Logstash、Kibana それぞれの仕様を理解し運用するには時間を要することがあります。
  5. 有料サポートの選択肢: 必須ではないものの、公式のサポートを得るには有料のプランを利用する必要があります。

とはいえ、ELK スタックはとても柔軟で強力なログ管理ソリューションです。大きな環境で綿密な分析が必要な組織には特に向いていると言えます。しかし導入にはコストや学習面での負担があるため、要件に合わせた検討が大切です。

導入手順: Grafana Loki と ELK

ここでは、Grafana Loki と一般的に認知される Elastic Stack(ELK)を実際に導入し、ログ管理を整備するプロセスを紹介します。それぞれの特徴を踏まえながら、どのようにセットアップすればよいかを解説します。

Grafana Loki の導入

Prometheus の概念を採り入れたことで注目を浴びている Grafana Loki は、拡張性と高可用性に優れ、多テナント対応のログ集約ツールです。とりわけシンプルな運用とコスト効率の良さが強みです。セットアップの手順は以下のとおりです:

1. 事前準備: Kubernetes クラスタが正常に動作しており、Helm が利用可能な状態にしておきます。

2. Loki の Helm リポジトリ追加: コマンドラインで次のように入力し、Helm と Loki のチャートリポジトリを連携します。

 
helm repo add loki https://grafana.github.io/loki/charts

3. Helm リポジトリの更新: 最新のチャートを取得するためにリポジトリを更新します:

 
helm repo update

4. Grafana Loki と Promtail のデプロイ: 次のコマンドで Loki とログ収集エージェントの Promtail をインストールします。

 
helm upgrade --install loki loki/loki-stack

ここまでで、Kubernetes 上に Grafana Loki が正常に起動している状態になります。

Elastic Stack の導入

ELK スタック (Elasticsearch、Logstash、Kibana) は Elastic 社が提供している一式です。手順としては以下を行います:

1. 事前準備: Ubuntu 18.04 ベースの環境が整っていること、root 権限や基本的なファイアウォールの設定が済んでいることを確認します。

2. Java のインストール: Elasticsearch は Java に依存して動作するため、Java Development Kit(JDK)をインストールします:

 
sudo apt update
sudo apt install default-jdk

3. Elasticsearch の導入: まず Elasticsearch の署名キーを追加します:

 
wget -qO - https://artifacts.elastic.co/GPG-KEY-elasticsearch | sudo apt-key add -

その後、以下のように Elasticsearch をインストールします:

 
sudo apt-get update && sudo apt-get install elasticsearch

4. Logstash のインストール: データを収集・変換する Logstash を次のコマンドで導入します:

 
sudo apt-get install logstash

5. Kibana の導入: Kibana を入れることでログを視覚化・操作しやすくなります:

 
sudo apt-get install kibana

ここまで行うと、ELK スタック全体が正常に稼働するはずです。

Grafana Loki と Elastic Stack の導入を比べる

Grafana Loki Elastic Stack
前提環境 Kubernetes + Helm Ubuntu 18.04, root 権限, 基本的なファイアウォール
インストールの難易度 シンプル (少ないコマンド数) 中程度 (複数コンポーネントを導入)
スケーラビリティ 非常に高い 十分高い (適切な設定次第)

このように、Grafana Loki と Elastic Stack はインストール方法や必要要件こそ違うものの、導入後は強力なログ管理機能を提供します。どちらを選択するかは、運用規模や要件にあわせフォーカスを定めるとよいでしょう。

Grafana Loki の設定手順

シンプルで効率的なログ管理を目指すうえで、Grafana Loki のセットアップは初見では敷居が高そうに見えるかもしれません。ここでは、初期導入から設定の調整までの流れをステップごとに解説します。

ステップ 1: Loki の導入

Grafana Loki をフルに動かすための最初の段階として、以下を行います:

  1. 公式サイトから OS に合った最新版をダウンロードする
  2. 選んだディレクトリにアーカイブを展開する
  3. 展開後のフォルダに移動する
  4. ./loki -config.file=loki-local-config.yaml で Loki を起動する

ステップ 2: 設定ファイルの編集

Loki の動作は loki-local-config.yaml で制御します。以下のような基本的な設定例があります:

 
auth_enabled: false

server:
  http_listen_port: 3100

ingester:
  lifecycler:
    address: 127.0.0.1
    ring:
      kvstore:
        store: inmemory
      replication_factor: 1
    final_sleep: 0s
  chunk_idle_period: 5m
  chunk_retain_period: 30s

schema_config:
  configs:
  - from: 2018-04-15
    store: boltdb
    object_store: filesystem
    schema: v9
    index:
      prefix: index_
      period: 168h

storage_config:
  boltdb:
    directory: /tmp/loki/index

  filesystem:
    directory: /tmp/loki/chunks

limits_config:
  enforce_metric_name: false
  reject_old_samples: true
  reject_old_samples_max_age: 168h

chunk_store_config:
  max_look_back_period: 0s

table_manager:
  retention_deletes_enabled: false
  retention_period: 0s

上記例では認証を無効にし、ポート 3100 を利用して起動する簡易構成になっています。ログを一時的にメモリ保持しつつインデックスやチャンクをローカルディレクトリに保存する仕組みです。

ステップ 3: 必要に応じた調整

環境に応じて設定を最適化してください。認証を入れたい場合は auth_enabled: falseauth_enabled: true に変更し、ユーザ情報を設定します。

ステップ 4: 動作確認

設定が完了したら動作を確かめます。以下の手順で簡易テストが可能です:

  1. ./loki -config.file=loki-local-config.yaml で再度起動
  2. 別のターミナルで echo 'Hello, Loki!' | ./promtail --stdin --client.url=http://localhost:3100/loki/api/v1/push を実行
  3. ブラウザで http://localhost:3100/metrics にアクセスし、メッセージが届いているかを確認

これらの手順を踏めば、Grafana Loki を使ったログ管理がスタートできます。環境に合わせた微調整を加えながら、最適なログ管理システムを構築しましょう。

ELK の導入方法まとめ

Elasticsearch、Logstash、Kibana の組み合わせ、通称 ELK スタックを取り入れることで、ネットワーク管理は飛躍的に向上します。ここでは、その導入フローをざっくり紹介します。

ステップ 1: システム要件の確認

ELK スタックを導入する前に、Ubuntu 18.04 もしくはそれ以降のバージョンが動作しており、root 権限を利用できること、また安定したネットワーク接続があるかなどをチェックしてください。

  • Ubuntu 18.04 以降の環境
  • root 権限
  • インターネットアクセス

ステップ 2: システム更新

まず、依存関係を最新化しましょう。コマンドラインで以下を実行します:

 
sudo apt-get update
sudo apt-get upgrade

ステップ 3: Java の導入

Java は ELK スタックの土台となります。まだインストールされていない場合は以下のコマンドで導入します:

 
sudo apt-get install openjdk-8-jdk
java -version

Java が正常に入ったら次に進みます。

ステップ 4: Elasticsearch のインストール

ELK スタックの要となる Elasticsearch をインストールし、設定します:

 
wget -qO - https://artifacts.elastic.co/GPG-KEY-elasticsearch | sudo apt-key add 
echo "deb https://artifacts.elastic.co/packages/7.x/apt stable main" | sudo tee -a /etc/apt/sources.list.d/elastic-7.x.list
sudo apt-get update && sudo apt-get install Elasticsearch

インストール後、Elasticsearch を起動して有効化します:

 
sudo systemctl start Elasticsearch
sudo systemctl enable Elasticsearch

ステップ 5: Logstash の導入

ログを収集して Elasticsearch に送るパイプ役として、Logstash を利用します:

 
sudo apt-get update && sudo apt-get install logstash

インストール後、Logstash を起動有効化します:

 
sudo systemctl start Logstash
sudo systemctl enable Logstash

ステップ 6: Kibana の導入

Elasticsearch のデータを探索・可視化するために Kibana を入れます:

 
sudo apt-get update && sudo apt-get install kibana

Kibana を起動有効化するには:

 
sudo systemctl start Kibana
sudo systemctl enable Kibana

ステップ 7: ファイアウォールの開放

UFW を利用している場合は、ポート 5601 (Kibana 用) へのアクセスを許可します:

 
sudo ufw allow 5601

ステップ 8: Kibana の確認

最後にブラウザで http://<サーバのIP>:5601 を開けば Kibana にアクセスできます。

ELK スタックのカスタマイズ

導入が完了したら、Logstash や Elasticsearch、Kibana の各設定を調整し、最適なデータフローを確立します。ログやイベント情報を活用して、システムの挙動をより正確に把握できるようにしましょう。

比較: Grafana Loki と ELK のビジュアル化

Grafana Loki でのデータ可視化

Grafana Loki は、Grafana との連携により洗練された可視化を実現します。時系列分析を得意とする Grafana のダッシュボード機能と組み合わせることで、リアルタイムに近い形でログから洞察を得るのが簡単です。

Loki の大きな特徴であるラベル指向の方式は、ログをラベルごとに検索・抽出できるので、特定の条件だけを取り出しやすいです。これにより、異常値や特定のパターンを素早く見つける助けとなります。

以下のようなコード例で Loki のログを呼び出して Grafana で可視化するイメージです:

 
# ラベルを設定
labels = { 'app': 'my-app', 'environment': 'production' }

# ラベルを使ってログを取得
logs = loki.get_logs(labels)

# Grafana で可視化
grafana.visualize(logs)

操作性や導入のしやすさが魅力ですが、より高度な可視化を必要とする場合は工夫が必要になることもあります。

ELK スタックを使った高度な可視化

一方で、ELK スタックの可視化レイヤーである Kibana は、より多彩な可視化機能を持っています。折れ線グラフや棒グラフ、円グラフ、地理情報の可視化などを組み合わせ、ログデータをさまざまな切り口で分析できます。

また、機械学習による異常検知や地理座標に紐づくデータの可視化、時系列の深掘り分析が可能なのも ELK の強みです。

例えば以下のように、Logstash で取り込んだログを Kibana で可視化するイメージです:

 
# Logstash がログをインデックス化
logstash.index_logs('my-logs')

# Kibana で可視化の定義
visualization = kibana.create_visualization('my-logs', 'line-chart')

# データを追加
visualization.add_data('response_time', 'average')

# 表示
kibana.display(visualization)

ELK スタックのビジュアル機能は非常に強力ですが、その分設定や操作を覚える手間は増えます。学習コストをかけてでも高度な分析を行いたい現場には最適です。

Grafana Loki と ELK スタックの比較

一般的に、Grafana Loki は使いやすさと軽量さを重視するプロジェクト向き、ELK スタックは多機能さや高度な分析力を必要とする場面向きという位置づけです。用途やチームの経験、予算に応じて正しいツールを選びましょう。

下表がそれぞれの可視化機能の概略比較です:

比較項目 Grafana Loki ELK スタック
Grafana との親和性 高い なし
ラベル指向 あり なし
高度なグラフ種類 最低限 豊富
機械学習による異常検知 なし あり
地理情報の可視化 なし あり
時系列データの深掘り 限定 高度

結局のところ、使いやすさを優先するなら Grafana Loki、高機能な検索や可視化が必須なら ELK という選択肢になるケースが多いといえます。

スケーラビリティで見る: Grafana Loki vs ELK

ログ管理システムを選ぶ際、スケーラビリティは欠かせない指標です。環境によっては急激にログ量が増えることもあるため、大規模対応が可能かどうかは重要な検討材料になります。ここでは Grafana Loki と ELK スタックのスケーラビリティにまつわる仕組みを比較します。

Grafana Loki のマイクロサービス設計

Grafana Loki はマイクロサービスアーキテクチャを採用し、Promtail(ログ収集)と Loki Distributor(分配・保管)などの役割を分離しています。これにより、必要に応じて複数のノードに水平方向へ拡張しやすい構造です。

Loki は「リングアーキテクチャ」を使い、追加したサーバをリング状に組み込むことでデータを均等に振り分けます。ログ内容をフルテキストで保存しない設計なので、リソース消費量が抑えられ、急増するログにも柔軟に対応可能です。

例として Kubernetes 環境でレプリカ数を増やすコマンド:

 
# Loki サーバの数を増やす
kubectl scale --replicas=3 deployment/loki

ELK スタックのスケーラビリティ

ELK スタックでは、特に Elasticsearch がデータ量拡大への対応を担います。Elasticsearch はシャーディングとレプリカという仕組みを持ち、クラスタ化によって多量のデータを分散して扱うことが可能です。

Logstash も必要に応じて複数インスタンスを動かし、入力データの負荷を分担できます。Kibana は可視化のフロントエンドであり、直接的なスケーリング要素には関与しないものの、同時アクセス数が増えた場合にも複数インスタンスを立ててロードバランサで振り分けが可能です。

例として Elasticsearch の設定を調整する例:

 
# Elasticsearch ノード数の調整例
PUT /_cluster/settings
{
    "persistent" : {
        "cluster.routing.allocation.total_shards_per_node" : 3
    }
}

総合評価: スケーラビリティの違い

どちらも大規模化に対応する設計を備えていますが、Grafana Loki は軽量設計でラベルのみを扱うことでリソース負荷を抑えている点が強みです。一方、ELK スタックは全文インデックスを行うため大きな自由度がある代わりに、運用時のリソース要求やノード管理がやや複雑になります。

総じて、シンプルさとリソース効率を重視するなら Grafana Loki、複雑なクエリや全文検索が必要なら ELK スタックがより合致すると言えます。

パフォーマンス比較: Grafana Loki と ELK

ログ管理ツールを選ぶ際、パフォーマンスは非常に重視される要素です。ここでは、Grafana Loki と ELK がそれぞれどのようなパフォーマンス特性をもっているかを見てみましょう。

パフォーマンスの指標

ログ管理で重要視される指標には、取り込み速度、クエリ速度、ストレージ効率、リソース使用量などがあります。以下ではこれらの点について両者を比較していきます。

取り込み速度

大量のログを受信して保存する速さが求められる場合、Loki は効率的です。理由は、ログの内容ではなくラベルだけをインデックス化するため、処理の負荷が抑えられるからです。

反対に、ELK はログの本文を全文検索向けにインデックス化するので、取り込み速度はやや落ちる場合があります。しかし、その代わりに検索性能の高さが得られる利点があります。

クエリ速度

Loki はインデックス化の範囲が狭いため、単純なラベル検索は高速です。一方で、ELK は全文検索が可能なので複雑な検索や詳細なテキストマッチを必要とする場合に優れています。しかしクエリが複雑になるほどリソース消費量は増す傾向にあります。

ストレージ効率

ラベル情報のみを保持する Loki はストレージ使用量を削減できます。対して ELK はより多くの情報をインデックス化するため、ディスク容量の消費量は増える傾向にあります。

リソース使用量

Grafana Loki は設計上軽量に作られているため、CPU やメモリを比較的少なく抑えられます。ELK の場合は多機能な分だけ重めですが、大規模かつ高度な分析を行う場合にメリットがあります。

Grafana Loki vs ELK: パフォーマンス一覧

指標 Grafana Loki ELK
取り込み速度 高い 中程度
クエリ速度 高い 可変
ストレージ効率 高い 中程度
リソース使用量 低い 高い

まとめると、Grafana Loki はログの取り込みや簡単な検索に強く、リソース消費量も少ないため、軽快に使えるのが特長です。一方の ELK はより複雑な検索や分析機能を提供している代わりに、導入コストとリソース負荷が大きくなりがちです。ニーズに応じて適切なツールを選ぶことがポイントです。

セキュリティ対策比較: Grafana Loki と ELK

大量のログを扱う上で、セキュリティをどう確保するかは欠かせません。ここでは Grafana Loki と ELK スタックのセキュリティ面を比較し、それぞれが取り入れている保護策や注意点を検討します。

Grafana Loki のセキュリティ機能

Grafana Loki は比較的新しいツールですが、テナントごとの独立ストレージを用いるなど最新のセキュリティモデルを取り入れています。ユーザごとにトークンを発行し、これを持たないとアクセスできない仕組みを採用しており、ログデータへの直接の侵入を防ぐ点で有効です。

ただし、保存時の暗号化などは標準では提供されません。つまりログが保存されているストレージ自体が侵害された場合、機密データが漏洩するリスクがあります。重要データを扱う場合は、ストレージレベルで暗号化するなど追加対策が必要です。

ELK スタックのセキュリティ

ELK の中心である Elasticsearch は、ユーザ管理やアクセス制御、操作ログ機能など比較的豊富なセキュリティ設定を提供します。特に有料版 Elastic Stack では、データの暗号化や IP 制限など、高度なセキュリティ機能が利用可能です。

一方で、無償版を選ぶ場合は使えるセキュリティ機能が限られたり、別途プラグインを導入する必要が出てきます。

比較: Loki と ELK のセキュリティ

機能 Grafana Loki ELK スタック
テナントごとの独立管理 あり なし
トークン型認証 あり あり
ユーザ権限管理 限定的 充実
アクセスログ なし あり
IP 制限 なし あり
保存時暗号化 なし あり (有料版)

こうして比べると、エンタープライズ級のセキュリティを求める場合は有料版を含む ELK が優勢と言えそうです。ただし、Grafana Loki でも工夫次第でセキュリティを高めることは可能です。用途や予算に応じ、適切な追加対策を検討しましょう。

業界ユースケース別の評価: Grafana Loki と ELK

ログ管理において有力な 2 つの選択肢、Grafana Loki と ELK。業界やユースケースによって、どちらがより適しているかは変わります。ここでは、それぞれのニーズに応じた視点で評価します。

ユースケース 1: 即時のログ分析が重要な業界

例えば金融や EC サイトなど、ログを即時に分析してトラブルや不正を検知する必要がある場合を考えます。

ELK は Elasticsearch の高い検索性能で膨大なデータを素早くさばき、詳細なクエリも可能です。リアルタイムに近い形で問題を洗い出す場面に強く、複雑な条件でログを探索できます。

Loki も十分な速度はありますが、ラベル指向なため複雑な検索には向きません。ただし、コストを抑えたい中小規模のプロジェクトなら優秀な選択肢になるでしょう。

ユースケース Grafana Loki ELK
即時のログ分析 3/5 5/5

ユースケース 2: スケーラビリティが最重要

ログ量が急増するような大規模サービスでは、どれだけ拡張できるかがカギとなります。

Loki はデフォルトで水平スケールを見据えた構成をとりやすく、ノード追加もシンプルです。

ELK もシャーディングを駆使して拡張可能ですが、管理がやや複雑になります。

ユースケース Grafana Loki ELK
スケーラビリティ 5/5 4/5

ユースケース 3: 運用の簡易さを重視

技術者のリソースが限られていて、なるべくシンプルに導入したい場合は Grafana Loki に軍配が上がりやすいです。

ELK は強力な半面、Elasticsearch、Logstash、Kibana の設計を理解・維持する手間がかかります。

ユースケース Grafana Loki ELK
運用の簡易さ 5/5 3/5

ユースケース 4: 高度な検索が必要

セキュリティや医療分野などで複雑な検索・分析が求められる場合、Elasticsearch の強みが活きます。全文検索や複雑なクエリを瞬時に返す仕組みは非常に有用です。

Loki はラベル検索に特化しているため、テキスト本文を狙った霊活な検索レベルには及びません。

ユースケース Grafana Loki ELK
高度検索の必要性 3/5 5/5

結論として、ELK は複雑かつ深い検索・分析が重要なユースケースに向き、Grafana Loki は導入や運用、コストなどを重視するプロジェクトで効果を発揮します。

事例: Grafana Loki と ELK を活用する企業

さまざまな企業がログ管理に Grafana Loki や ELK を採用して多くの恩恵を得ています。本セクションでは実際の事例をもとに、それぞれのスタックがどのように貢献したかを紹介します。

Grafana Loki の事例: Grafana Labs のケース

Grafana Loki を開発している Grafana Labs 自身が、Loki を大規模に活用しています。数多くのマイクロサービスが生み出す膨大なログをラベルのみで管理することで、ストレージコストや運用負荷を大きく削減しました。

さらに、同社の Grafana と統合した監視環境を利用することで、メトリクスやログ、トレース情報を統合的に扱えるようになり、システム全体の可視性が飛躍的に上がったといいます。

ELK の事例: LinkedIn のケース

世界最大級のプロフェッショナルネットワークである LinkedIn は、毎日 15 億行を超えるログを処理・分析するために ELK を活用しています。Elasticsearch を用いてリアルタイムに近い形で問題を検知し、サイトの安定性を保つことに成功しました。

Kibana のダッシュボード機能を使って、チームごとに必要なメトリクスやログを可視化し、開発・運用の連携をスムーズにしている点も大きなメリットとなっているようです。

比較ケース: 中規模のテック企業

仮にマイクロサービスが複数稼働する中規模のテック企業を想定した場合、導入コストや運用負荷を抑えつつそれなりの検索機能が欲しい、という条件がよくあります。

こうした企業が Grafana Loki を選べば、コスト面と取り回しの良さで恩恵を受けられるでしょう。あえてフルテキスト検索を捨てても問題なく、メトリクスやログを一元的に扱える利点が優先されるケースです。

逆に、ログを詳細に分析する必要が高く、高度な検索や可視化を欠かせない場合は ELK が有力候補です。多少リソース負荷が増しても、多機能な検索や処理能力が運用上の価値を上回ります。

結果として、どちらも実績あるツールであり、プロジェクトの諸条件や優先度にあった選択をすることが重要と言えます。

将来動向: Grafana Loki と ELK はどう進化する?

今後も Grafana Loki と ELK は、それぞれの強みを伸ばしながら、さらなる機能拡張が見込まれています。ログ管理のニーズが高まるにつれ、どちらも成長し続ける可能性が高いです。

Grafana Loki の展望

Loki は「シンプルさと効率」をキーワードに進化すると考えられています。インデックスを極力絞るデザインを維持し、動作の軽さと扱いやすさをさらに磨いていくでしょう。

また、Grafana シリーズとの連携をより強固にしていく動きも続くと予想されます。メトリクスやトレースとログをまとめて一元管理できるように、さらなる機能追加や改善が行われるでしょう。加えて、クエリ言語 LogQL の強化も見込まれ、柔軟な検索や分析が可能になるはずです。

ELK スタックの展望

ELK スタックは、今後も大規模環境へのスケーラビリティと柔軟性に注力する見込みです。すでに大規模でも稼働している実績が豊富なだけに、より高度なセキュリティ対策やクラウド環境との連携強化が進むでしょう。

また、機械学習機能の拡充により、より先進的なデータ分析や異常検知が可能になることが期待されます。Kibana を中心に、さらに広範なデータ可視化・分析オプションが追加される可能性も高いです。

両者の未来予測

注目ポイント Grafana Loki ELK スタック
シンプル & 軽量化 継続強化 該当せず
製品連携の強化 Grafana 系とさらに連動 限定的
クエリ機能の拡充 大幅に改善見込み 継続的に強化
スケーラビリティ 現行のまま さらに拡充
セキュリティ対策 追加的対策の期待あり 有料版中心に強化
高度分析 限定的 機械学習などで進化

このように、Grafana Loki と ELK スタックは向かう方向性こそ異なるものの、いずれもニーズに合わせて改良が続くでしょう。利用を検討している企業にとっては、将来的にも拡張・保守される可能性が高く、安心して選択できるソリューションと言えます。

結論: Grafana Loki か ELK か?最終整理

ここまで、Grafana Loki と ELK を多方面から比較検証してきました。それぞれの強みや弱みを踏まえて、最終的にどちらを選べばよいのか、まとめてみましょう。

Grafana Loki: 軽量派の本命

Grafana Loki の最大の利点は、「シンプルさとコスト効率」です。ラベルだけを扱う仕組みなので導入が容易で、リソース消費も低く抑えられます。Grafana との連携を前提にしているため、すでに Grafana を使っている場合は特に導入しやすいでしょう。

ただし全文検索ができないなどの制約があるため、ログを詳細に深掘り分析する必要があるときには物足りないかもしれません。

ELK: 多機能派の王道

一方の ELK(Elasticsearch、Logstash、Kibana)は、成熟度が高く、全文検索や高機能な可視化に対応しているのが特長です。コミュニティも大きく、情報が豊富な点も初心者には助けになるでしょう。

ただし、その多機能ぶりが仇となり、セットアップや運用が複雑になりがちで、リソースコストも高くつくケースが多いです。

比較表

機能 Grafana Loki ELK
全文検索 不可 可能
運用の複雑さ 低い 高い
リソース消費 低い 高い
コスト 低い 高い
コミュニティ 小規模 大規模
Grafana との統合 抜群 良好

最終的な判断

最終的に Grafana Loki と ELK のどちらを選ぶかは、「どんなログ分析が必要か」「どれくらいの規模で運用するか」「どこまで追加リソースを割けるか」という要件によります。簡易さや軽さを重視するなら Loki、強力な検索・分析と大規模運用が必須なら ELK と考えるのが自然でしょう。

いずれにしても、両者ともに多くの利用実績がある優れたログ管理ツールです。プロジェクトの要件を明確にしたうえで、それぞれの特徴を見極め、最適な選択につなげてください。

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