イントロダクション:Kubernetesの設定を理解する
Kubernetes(K8sとも呼ばれます)は、アプリのオーケストレーションやオーケストレーション、ソフトウェアのデータ調整、リポジトリ内のプロトコル管理などをまとめて扱うための先進的でオープンなプラットフォームです。簡単にいうと、Kubernetesはソフトウェアの構成要素をわかりやすくクラスターにまとめて管理します。Kubernetesを十分に活用してソフトウェアをスムーズにデプロイするには、その基本的な動作原理を理解することが大切です。
Kubernetes設定の複雑さを理解する
Kubernetesの設定に慣れるには、サービスやアプリがKubernetesの運用設計の中でどう動くかを把握する必要があります。アプリに求められる要件や、効率を高めるためにどれくらいの数を複製するか、そしてネットワーク構成の知識などが必要です。
設定データは通常、JSONまたはYAMLで表現され、Kubernetes APIを通じてシステムに取り込みます。これはアプリの理想的な運用状態を示すもので、Kubernetesは現在の状態と理想の状態を常に照らし合わせて調整します。
Kubernetes設定の価値を理解する
Kubernetesを設定するメリットとして、以下の点が挙げられます:
Kubernetes設定に役立つツール:Helm & Kustomize
設定プロセスを簡単にするために、さまざまなツールがあります。中でもHelmとKustomizeは特に重要です。
HelmはKubernetes用のパッケージ管理的な位置づけで、Kubernetesクラスター上でアプリやサービスを梱包・設定・リリースする作業を最適化します。一方、Kustomizeは、kustomizationファイルを使ってKubernetesのオブジェクトを変更するためのツールです。
今後のトピックでは、HelmとKustomizeの詳細な特徴や利点・欠点、どのような場面で有用か、そしてKubernetesとの連携手法などを解説します。さらに、それらを使ううえでのベストプラクティスや運用上のポイントについても取り上げる予定です。独自性を重んじながら内容を作り、盗用を避けつつ、HelmやKustomizeをより深く理解できるよう解説します。
devops界隈でよく聞かれるapt/yum/homebrewのような存在として注目されるHelmは、Kubernetes環境を効率よくセットアップ・カスタマイズする点で、大きな価値をもたらします。HelmはKubernetes環境におけるアプリの起動や最適化、カスタマイズを統合的に管理します。
Helmのしくみ
Helmはクライアント・サーバーの仕組みで動作し、CLIツールの“helm”がクライアント側として機能します。以前は“Tiller”というサーバーコンポーネントがKubernetes内で動作していましたが、Helm 3以降はTillerが排除され、よりシンプルな作りとなりました。
Helmは以下の3つの要素で構成されます:
Helm Blueprintsの詳細
Helmの中心はBlueprintです。これはKubernetes上でアプリを作成・変更・最適化するための設計図の集まりです。ディレクトリ構造に従って複数のファイルをまとめ、それらをバージョン化してパッケージ化することで配布や初期デプロイを簡単にします。
例えば、以下のような構造が考えられます:
blueprint/
Blueprint.yaml # Blueprintに関する情報が入ったYAML
LICENSE # (任意) ライセンス情報
README.md # (任意) ユーザー説明
parameters.yaml # Blueprintを調整するためのパラメータ定義
blueprints/ # 親Blueprintを支える追加Blueprint
templates/ # テンプレートが入る場所。valuesと合わせてKubernetesのマニフェストを生成
templates/NOTES.txt # (任意) 補足の説明を記載するファイル
Helmがもたらす幅広いメリット
Helmの強みには以下があります:
このように、HelmはKubernetesアプリを統合的に管理するための強力なリソースです。設定やアプリ構造、進捗管理を明確にし、Kubernetesの運用において頼りになる存在です。
HelmはKubernetes運用で強みを発揮し、アプリのインストールや管理プロセスを効率化します。ここでは、DevOpsの現場でも人気のHelmがもたらす効果的な利点を確認します。
迅速なアプリ展開
Helmの最大の特長はデプロイを素早く行える点です。パッケージ形式の“chart”を使って、アプリ内のKubernetesリソースをひとまとめにするため、複雑なアプリをまとめて短時間で導入できます。
apiVersion: v2
name: myapp
description: A Helm chart meticulously designed for Kubernetes
type: application
version: 1.0.0
appVersion: 1.0.0
上記はシンプルなHelmチャートの例です。APIバージョンやアプリ名、バージョンといった基本情報が含まれています。
バージョン管理と復旧をサポート
Helmにはバージョン履歴の機能が組み込まれています。アプリのインストール履歴を追跡し、問題が起きたときに簡単に以前のバージョンへ戻せます。運用環境の安定性を高めるうえで、非常に助かる仕組みです。
helm history myapp
helm rollback myapp 1
この例では、最初のコマンドがmyappの履歴を表示し、次のコマンドで1番のリビジョンに戻しています。
再利用性と共有に強い
作成したHelm chartは再利用や共有がしやすい点も優れています。一度チャートを用意すれば、開発・テスト・本番など様々な環境で使い回せますし、チーム内や公開リポジトリでも共有できます。これによって統一的な展開が可能になります。
高度なテンプレート機能
Helmはテンプレート機能に優れ、1つのチャートでパラメータを変えて複数の部署・環境に合わせられます。これによりデプロイ毎に違う設定値を適用しやすくなっています。
apiVersion: v1
kind: Service
metadata:
name: {{ .Values.service.name }}
spec:
type: {{ .Values.service.type }}
ports:
- port: {{ .Values.service.port }}
この例では、service名やportなどをパラメータ化しています。values.yamlやコマンドラインで渡すことで柔軟に設定可能です。
コミュニティの活発なサポート
Helmはオープンソースのコミュニティが活発で、更新や改善が絶えず行われています。定番のアプリに関しては無償で使えるchartが公開されている場合が多く、独自構築の手間を省くことができます。
このように、Helmは迅速なデプロイ、バージョン管理、チャートの再利用性など数多くの利点を備え、Kubernetes環境の運用を飛躍的に効率化できる存在として知られています。
多くのメリットをもつHelmですが、いくつかの注意点も存在します。これらを理解しておくことで、導入時に役立ちます。
習熟までのハードル
Helmは便利な分、学習コストが高い面があります。様々な機能を理解するにはKubernetesそのものの知識も必要になるため、初心者にとってはやや敷居が高く感じられるでしょう。
Chartのメンテナンス
Helmはアプリをまとめ上げる“チャート”という仕組みを使いますが、アプリが進化するとチャートも更新が必要です。多くのサービスや要素が含まれると、それらのメンテナンスが煩雑になりがちです。
セキュリティ上の懸念
以前のHelmでは“Tiller”が幅広い権限をもつ設計で、セキュリティ面で議論がありました。Helm 3ではTillerが削除されて強化されましたが、チャートが任意のスクリプトを実行できる点は依然としてリスクです。
チャートの柔軟性が限定的
Helmチャートはカスタマイズ性があるものの、テンプレートに限界がある場合があります。状況によっては柔軟性が足りず、別のツールを探す必要があります。
依存関係の扱い
Helmはチャート同士の依存関係を管理できますが、これが複雑になると混乱しやすいです。バージョンの不一致などでデプロイが失敗する可能性があります。
バージョン間の互換性
Helm 2からHelm 3へのアップグレードで互換性の問題が発生するなど、バージョン間で大きな変更がある場合、古いチャートがそのままでは使えないことがあります。
こうした難点を踏まえつつ、Helmが提供する優れた機能をどう活かすかを検討することが大切です。習熟の難しさやメンテナンスの負荷、セキュリティ面を事前に理解すれば、有効な選択肢となるはずです。
Helmを活用する:Kubernetesを一元管理
HelmはKubernetes環境下でアプリを管理する重要なツールとして、多彩な機能を提供します。Helmなら正確かつ効率的にKubernetesの設定やデプロイを実行できるため、その独自のメリットを紹介します。
高速なアプリ配信
Helmの大きな特長の一つは、アプリを展開しやすくする“チャート”という独特の仕組みです。複数のKubernetesリソースをまとめた一式として扱えるため、単一の単位として簡単に管理できます。
ベンチャー企業から大規模企業まで、Helmチャートの作成やタグ付け、リポジトリへの配布が容易であることは大きな利点です。以下の例のように、シンプルなチャート構成を使ってWebサーバや複雑なマイクロサービスもまとめられます。
apiVersion: v1
kind: Service
metadata:
name: {{ .Values.service.name }}
labels:
app: {{ .Values.service.name }}
spec:
type: {{ .Values.service.type }}
ports:
- port: {{ .Values.service.port }}
targetPort: {{ .Values.service.targetPort }}
protocol: TCP
name: http
selector:
app: {{ .Values.service.name }}
洗練されたアップデート管理
Helmはソフトウェアのバージョンアップ管理に強みがあります。新バージョンのデプロイだけではなく、問題があった場合に過去のバージョンにすぐ戻せるので、アプリの安定稼働を強力にサポートします。
依存関係の一括制御
Helmのチャートは他のチャートを依存関係として含めることも可能です。これにより、複数コンポーネントをひとまとめにしたパッケージを構築しやすくなります。大きなマイクロサービス群などを扱う際に特に強力です。
柔軟なコンフィグ制御
Helmはvalues.yamlファイルとチャートを組み合わせて、必要に応じたパラメータを自由に設定できます。デプロイ先の環境要件に合わせて調整できるので、運用側のコントロール性が高まります。
活発なコミュニティ
Helmが多くの利用者から支持される理由のひとつは、オープンソースコミュニティの充実度です。よく使われるアプリに関するチャートはコミュニティベースで継続的に更新され、新機能も積極的に取り込まれます。
まとめると、Helmがもつ高速なアプリ配信、更新管理、依存関係制御、柔軟なコンフィグコントロール、そして活発なコミュニティという特徴が、Kubernetes運用において頼もしい存在となっています。
Kubernetesの世界において、Kustomizeは単体で動作するツールとしてアプリ開発を助ける仕組みを提供します。テンプレートを使わずに、Kubernetesが得意とするYAMLの利点を生かして動作し、環境別のアプリ設定をわかりやすく管理します。
Kustomizeの特徴
Kustomizeの独自性は、baseとoverlayという概念にあります。baseは共通設定、overlayは各環境用の差分を定義するイメージです。これにより開発・テスト・本番などの環境に合わせて簡単に設定を切り替えられます。
Kustomizeの中心にはkustomization.yamlというファイルがあり、baseとなるリソースやoverlayを通じて行う差分管理をまとめて記述します。テンプレートに依存せず、宣言型の形で設定を扱うのでミスを減らせます。
Kustomizeがもつ主な機能
Kustomizeは次の点でKubernetesの設定を助けます:
以下はシンプルなkustomization.yamlです:
apiVersion: kustomize.config.k8s.io/v1beta1
kind: Kustomization
resources:
- deployment.yaml
- service.yaml
patchesStrategicMerge:
- patch.yaml
ここでは、deployment.yamlとservice.yamlという2つのリソースを指定し、patch.yamlで特定の修正を加えています。
Kubernetesとの結合
Kustomizeはkubectlに統合されているため、追加ツールを導入しなくてもkubectlコマンドで連携できます。一方で独立ツールとしても動作し、自由度が高いです。
このように、Kustomizeは宣言的なアプローチでKubernetesのリソースを管理するため、シンプルかつスケーラブルにアプリ設定を扱えます。baseとoverlayの考え方や、patchの仕組みによって大規模なアプリケーションでも柔軟に対応できます。
Kubernetesの設定ツールとしてHelmとKustomizeは注目されますが、そのアプローチが異なるため選択が悩ましいところです。
動作スタイルの違い
Helmは、アプリを“グラフ”の形にまとめ、依存するKubernetesリソースをすべて打包する方法で管理します。一方Kustomizeは“スキン”のように、オリジナルのマニフェストを直接いじらず、overlayで変更を重ねていく仕組みです。
グラフ構造 vs スキン操作
HelmのCharts(グラフ)はテンプレートをうまく活用して柔軟に値を与えられる反面、初学者にとっては難易度が高くなりがちです。KustomizeはオリジナルのYAMLをベースに差分を積み上げるため、シンプルな反面、Helmほどのテンプレート柔軟性はないかもしれません。
バージョン管理
Helmにはリリースの概念があり、バージョン管理やロールバック機能が充実しているのが強みです。KustomizeはあくまでKubernetesの標準機能を使うスタイルなので、細かなバージョン管理機能は持ちません。
使いやすさと機能のバランス
Helmは多機能ゆえにKubernetesの知識が求められ、学習コストも高めです。Kustomizeはより直感的ですが、高度な依存関係管理やバージョン管理機能は持たないため、いずれを選ぶかはプロジェクト要件次第といえるでしょう。
セキュリティ面
初期のHelmはサーバーコンポーネントTillerへの懸念がありましたが、Helm 3で直接Kubernetes APIと通信するよう改善が進みました。Kustomizeはサーバーレスで動くため、導入がシンプルでセキュリティリスクも抑えられます。
まとめると、Helmは機能豊富だが複雑、Kustomizeはシンプルだが高度な機能は少なめ、といった棲み分けがあります。どちらを選ぶかは、Kubernetesを使う目的や必要な機能をよく考慮する必要があります。
Kubernetes基盤のツールとしてHelmが優勢になるケースを解説します。Helmが得意とするユニークな機能や活用可能なシーンを理解しておくと、Kustomizeとの使い分けが分かりやすくなります。
Helmの独自的な要素
Helmには以下の特徴的な機能があります:
Helmが活躍する場面
これらを踏まえ、Helmが選ばれやすい状況として:
Helm vs Kustomizeの比較
Capability | Helm | Kustomize |
---|---|---|
パッケージ化 | Blueprint(高度な打包) | Overlayに基づく単純なモデル |
テンプレート | 柔軟なテンプレート言語 | パッチ適用が中心 |
ロールバック手段 | バージョン履歴が標準装備 | 独自のロールバック機能はなし |
このように、依存関係が多い大規模アプリやバージョン管理を重視する場合には、Helmを使うメリットが大きいです。
KubernetesオーケストレーションでHelmが目立ちがちですが、Kustomizeにもユニークで重要な強みがあります。どのような点でKustomizeが優位なのか、確認してみましょう。
柔軟な設定変更に強い
Kustomizeはファイルを直接パッチという形で変えていく方法を採用しており、Helmのテンプレートとは異なる柔軟性を持ちます。設定の一部だけを微調整したい場合など、細かい変更を加えやすいです。
Kubernetesと自然に統合
Kustomizeはkubectlと統合されているため、余計なツールをインストールしないで使える手軽さがあります。kubectlコマンドで直接Kustomizeの機能を呼び出せるので、導入ハードルが低いです。
宣言的アプローチを推進
Kustomizeは宣言的に“最終状態”を記述し、その状態に合わせてリソースを生成・修正する仕組みをとります。Helmのようにコード的なテンプレートを多用せずに済むため、人的ミスが減りやすい利点があります。
サーバー不要の単純設計
Helm 2まではTillerというサーバーコンポーネントを使っていたため、セットアップが煩雑でした。Kustomizeはそうしたサーバーコンポーネントが不要で、構成管理が単純化します。
Secretの扱いが丁寧
KustomizeではSecretを動的に生成し、外部シークレットマネージャーとの連携もしやすい設計です。セキュリティ面で乱雑になりがちなHelmチャートよりも、機密情報を扱いやすいという声もあります。
結論として、Kustomizeは単純かつ柔軟な設定変更、Kubernetesネイティブな操作感、Secret管理などで透過性が高いのが特徴です。Helmほどのパッケージ力はありませんが、必要十分な機能をスマートに提供しています。
Kubernetesで設定を扱う際、Helm ChartsとKustomize Overlaysのどちらを選ぶか迷う方も多いでしょう。両者は同じ領域を扱いつつも、提供する機能と使い勝手が異なります。ここでは両者の特徴を整理し、比較します。
Helm Chartsの仕組み
Helm Chartsは事前に設定されたKubernetesリソースのまとまりを指し、Webサーバなど簡単なものから、複数サービスが組み合わさった複雑なアプリまで幅広く表現可能です。決まったディレクトリ構造にファイルを配置し、バージョン付きのチャートを作ることで管理や配信が容易になります。
代表的な要素:
Kustomize Overlaysの仕組み
Kustomizeはマニフェストを直接テンプレート化せず、overlayという差分適用の手法を採用します。基本構成をbaseディレクトリに置き、環境ごとにoverlayディレクトリを作ることで設定を分けるのが一般的です。
代表的なディレクトリ構成:
Helm Charts vs Kustomize Overlaysの具体的な差異
Functionality | Helm Charts | Kustomize Overlays |
---|---|---|
パラメータ化 | テンプレート方式 | パッチ方式 |
複雑度 | 高い | 低い |
柔軟性 | 高い | 中程度 |
依存関係管理 | 標準サポート | 非対応 |
セキュリティ | Tiller問題(Helm 3で改善) | 追加コンポーネント不要 |
このように、アプリの規模やチーム構成、セキュリティ要件によって使い分けが必要です。
Kubernetesでのアプリ管理にはHelmやKustomizeが役立ちますが、状況や要件によってどちらが便利か異なります。いくつかのシナリオを例に挙げ、その活用方法を比較してみましょう。
ケース1:多数の依存コンポーネントを含む複雑なアプリ
複数のサービスやモジュールが密に連携する大規模アプリを導入するとします。依存関係のバージョン管理が重要で、常に整合性を保つ必要があります。このような場合、Helmのパッケージ管理が有利です。
Helmは複雑な依存関係をひとつのチャートにまとめ、バージョン付けして管理できます。あらかじめ定義したサービス同士をセットでアップデートできるので、整合性を崩すリスクが減ります。
# Helm Chart application
apiVersion: v2
name: prototype-app
version: 1.0.0
dependencies:
- name: Postgres
version: 9.6.2
repo: https://charts.bitnami.com/bitnami
Kustomizeは依存管理を持たないため、複数の要素が複雑に絡むアプリでは管理が煩雑化しやすいです。
ケース2:環境ごとにアプリを微調整したい
テスト・ステージング・本番など複数の環境で同じアプリを動かしたい場合、微妙に設定を変える必要があります。ここではKustomizeのoverlayが大いに役立ちます。
共通設定をベースとして準備し、環境別のoverlayを用意して差分だけ指定することで、同じマニフェストを流用しつつ調整が可能です。
# Standard Kustomize layout
apiVersion: apps/v1
kind: Deployment
metadata:
name: prototype-app
spec:
replicas: 3
template:
spec:
containers:
- name: prototype-app
image: prototype-app:1.0.0
# A Kustomize overlay drafted for production
apiVersion: kustomize.config.k8s.io/v1beta1
kind: Kustomization
bases:
- ../arrangement
patchesStrategicMerge:
- patch.yaml
patch.yamlを用いて、レプリカ数やイメージタグなど環境ごとの違いを簡単に管理できます。Helmでも環境変数をvaluesファイルで管理できますが、手動での切り替えが増える場合があります。
ケース3:失敗時の迅速なロールバック
リリース後に即トラブルを起こした場合、素早く前の状態に戻す必要があります。こうしたケースでは、Helmのロールバック機能が光ります。
コマンドひとつで前のバージョンに戻せるため、サービスダウン時間を短縮でき、影響を最小限に抑えられます。
# Rollback to the second deployment
helm rollback prototype-app 2
Kustomizeには標準でロールバック機能がなく、復旧は手動で以前の設定を再適用する必要があります。
結局、依存パッケージ管理やロールバックを重視するならHelm、環境ごとの微調整を手軽にしたいならKustomizeがおすすめです。アプリの要件や運用方針に合わせて適切なツールを選択してください。
Helmを利用することで、Kubernetes上のアプリ管理が効率よく進みます。ここでは、Helmを使ったKubernetes運用管理の流れやリソースを最適に活用する方法を見てみましょう。
Helmの構成要素を理解する
Helmはチャートという仕組みを通じて、Kubernetesのリソース定義を一括管理します。Webサービスの起動から複雑な分散システムまで、チャート化することで、指定した作業を統合的に行えます。
KubernetesをHelmで操る
Helmチャートにはアプリが必要とするリソース情報がまとめて書かれ、複数環境へ簡単に展開できます。Helm独自のコマンド群(デプロイやアップグレード、ロールバックなど)によって、アプリのライフサイクルをコントロールしやすくなります。
さらにチャート同士を共有し合うことで、複数サービスに横断的な標準化を図りやすい点もメリットです。
Helmは「Atomicな操作」を取り入れ、デプロイの失敗時には変更を元に戻す仕組みも備えており、全体の安定稼働に役立ちます。
リソース配分を最適化する方法
Helmではバージョンベースの管理をするため、必要に応じて過去のインストール状況へすぐに戻れます。これによって不測の事態でもリソースが無駄に消費されにくく、安定動作を保ちやすくなります。
操作が失敗した際は一括で巻き戻しが行われ、システムが中途半端な状態に残らない仕組みも、リソースの最適化に寄与します。
Helmの事例:複数サービスをまとめてデプロイ
例えば、フロントエンドとバックエンド、両サービスを含むWebアプリをHelmチャートでまとめれば、両方を一括デプロイ・管理でき、構成の把握も容易になります。
以下は簡易的なチャート例です:
# Chart.yaml
apiVersion: v2
name: experiment-web-application
version: 1.0.0
# templates/frontend.yaml
apiVersion: v1
kind: Service
metadata:
name: frontend-services
spec:
selector:
app: frontend-SafeGuardians
ports:
- protocol: TCP
port: 80
targetPort: 8080
# templates/backend.yaml
apiVersion: v1
kind: Service
metadata:
name: backend-services
spec:
selector:
app: backend-SafeGuardians
ports:
- protocol: TCP
port: 80
targetPort: 8080
こうしたチャートを使うと、フロントエンドとバックエンドをセットで展開し、失敗時のまとめたロールバックも簡単です。リソース管理がシンプルになる利点は大きいです。
総じて、HelmはKubernetesのアプリ管理・リソース配分をスムーズにし、高信頼の環境を作り出す鍵となります。
Kubernetes運用をスリム化するKustomizeの活用
KustomizeはKubernetes環境に大きな柔軟性をもたらし、さまざまな場面で活用できます。
Kustomize特有の強み
Kustomizeはoverlayを中核として、設定に余計な重複を生み出さずに複雑な要件を扱える点が魅力です。大規模な構成でも、base設定と差分overlayを組み合わせることで微調整を簡略化できます。
Kustomizeの主な機能
Kustomizeでのワークフロー改善
Kustomizeを使うと、重複定義の削減や自動的なリソースマージが期待できます。大規模組織や複数環境を持つ企業にとっては、運用をコンパクトにまとめられるメリットが大きいです。
Kustomize活用例
例として、開発環境と本番環境でレプリカ数やイメージタグを変えたい場合、baseディレクトリを共通定義とし、overlayで個別差分だけ記述できます。
以下はシンプルなdeployment.yamlです:
apiVersion: apps/v1
kind: Deployment
metadata:
name: sample-app
spec:
replicas: 2
selector:
matchLabels:
app: sample-app
template:
metadata:
labels:
app: sample-app
spec:
containers:
- name: sample-app
image: sample-app:1.0.0
開発環境用のoverlayではレプリカ数を1にするなど、環境別設定を簡単に追加できます:
apiVersion: apps/v1
kind: Deployment
metadata:
name: sample-app
spec:
replicas: 1
baseとoverlayを組み合わせることで、各環境に合わせた設定変更を最小限の差分で適用可能です。Kustomizeを活用すれば柔軟かつ見通しの良いKubernetes構成管理を実現できます。
Kubernetesにおける構成ツールとして、HelmとKustomizeはいずれも多くの企業で採用されています。ここでは、実際にどのように使われているか、具体的に見ていきます。
事例1:大規模オンラインマーケット
数百ものマイクロサービスを持つ大規模ECプラットフォームでは、依存関係とバージョン管理が重要な課題でした。そこでHelmを導入して、各サービスをチャートとして整理し、依存関係を明確化。さらにロールバック機能を活用し、不具合発生時に即座に以前の状態に戻せました。
一度バグが潜んだデプロイを行った際、Helmのロールバックで素早く元に戻し、顧客への影響を最小限に抑えた成功例があります。
事例2:金融系スタートアップ
まだDevOpsチームが小規模なFinTech企業では、なるべく学習コストを低く抑えたかったためKustomizeを選択しました。設定をYAMLで直感的に書けるので、チームメンバー全員が理解しやすかったのです。
Kustomizeのoverlayで開発・テスト・本番と環境を明確に分け、設定ファイルを重複せずに管理できました。急激なユーザー増加への対処時も、単にYAMLを修正して適用するだけでスケーリングでき、ダウンタイムを防げたそうです。
共通点と相違点
これらの事例から、以下のポイントが導き出せます:
最終的には、プロジェクトの要件とチームのスキルセットを考慮して、どちらを選ぶか決まります。両者の特性をしっかり把握し、適材適所で使い分けることが重要です。
Kubernetesの設定を扱う上で、セキュリティ面の配慮は欠かせません。HelmとKustomizeは、それぞれ異なる形でセキュリティを捉えています。ここでは、主に注目すべきポイントを紹介します。
Helmのセキュリティ対策
HelmはKubernetes用の“パッケージマネージャー”として、以下の仕組みを提供します:
ただし、Helmのテンプレート機能で悪意あるスクリプトが紛れ込む可能性は残り、運用には注意を要します。
Kustomizeのセキュリティアプローチ
Kustomizeは宣言的な構成管理に特化しているぶん、Helmと少し異なる観点のセキュリティを提供します:
ただし、Helmのようなチャート署名などはなく、信頼できるリポジトリから得た設定を使う運用が前提になります。
総合評価
Helmはチャート署名やRBACなどを活用して強化しやすい半面、テンプレート周りの注意が必要。Kustomizeはスクリプトレスな構成管理で堅牢ですが、チャートの検証機能までは含まず、それぞれに得意分野と課題があります。
結局どちらも使い方次第でセキュリティを高められますので、それぞれの特徴を理解し、プロジェクトに合った運用が望まれます。
Kubernetesの運用でHelmやKustomizeを使っていると、設定やデプロイでつまずくことがあります。ここでは、よくある問題とその解決策をまとめました。
Helmでありがちな問題
Helmはパッケージマネージャ的に多機能なため、以下のような問題が起きやすいです:
1. デプロイ失敗
Chartの設定ミスやネットワーク問題でデプロイが失敗することがあります。helm status
で状況を確認し、不整合を特定してください。
helm status [RELEASE_NAME]
2. Chartの依存関係エラー
Helmはチャート間の依存を指定できますが、更新漏れなどで失敗することがあります。helm dependency update
を実行して、依存関係を最新化しましょう。
helm dependency update [CHART]
3. リリースバージョンの衝突
同じリリース名で複数回インストールするとエラーを起こすことがあります。バージョン番号を上げるか、--replace
フラグを使うと解決できます。
helm install --replace [RELEASE] [CHART]
Kustomizeでありがちな問題
Kustomizeはファイルベースのパッチ方式なので、以下の点に気をつけます:
HelmとKustomizeのトラブル比較
Problem | Helm解決策 | Kustomize解決策 |
---|---|---|
デプロイ失敗 | helm status でエラー箇所を確認 |
kustomization.yamlを再チェック |
依存関係の問題 | helm dependency update で更新 |
リソース指定ミスを修正 |
バージョン衝突 | バージョンを変更または--replace |
該当なし |
設定ファイルの誤記 | Chart YAMLを検証 | YAMLリントツールで検証 |
リソースが見つからない | 該当なし | baseとoverlayが正しいか確認 |
競合パッチ | 該当なし | パッチが矛盾しないよう修正 |
基本的には設定ファイルの正確性や依存バージョンの維持がトラブル回避の要です。問題が起きたらエラーログやコマンド出力を確認しながら、適切な修正を行ってください。
Helmの進む先
Kubernetesの発展とともに、Helmも着実に変化を続けています。Helm 2からHelm 3への移行ではTillerが廃止され、大幅にセキュリティが改善されました。今後はリポジトリ運用の仕組みの多様化など、より柔軟なアプリ連携が期待されています。
Helm OperatorやFluxとの連携でGitOpsを発展させるなど、他ツールとの協調も着目ポイントです。
Kustomizeの現在地
Kustomizeは比較的新しく、まだ主要機能を確立中ですが、base/overlayの仕組みは一定の支持を獲得しています。今後はより大規模なオーバーレイ管理のしやすさや、他ツールとの連携強化が進むでしょう。
Helmチャートとの相互運用やKubernetesオペレーター群との連動が加速すれば、さらに導入しやすくなると予想されます。
HelmとKustomizeの比較
Features | Helm | Kustomize |
---|---|---|
チャートリポジトリ | 一元管理モデル | 将来的に分散型へ進化の可能性 |
オーバーレイ機能 | なし | 中核的存在 |
他アプリ連携 | ある程度済 | 今後拡張の余地大 |
協調的な活用
HelmとKustomizeは必ずしも競合するものではなく、それぞれの強みを組み合わせて使うことも可能です。たとえば、Helmチャートで大まかなパッケージ化を行い、その出力に対してKustomizeのoverlayを適用すれば、細かい調整と大規模管理を両立できます。
両者の連携が進むと、よりスムーズなKubernetesデプロイ手法が生まれると見込まれています。機能の進化に伴い、ユーザーにとっても選択肢が広がるでしょう。
最終的にHelmとKustomizeはともに活発な開発が続けられ、Kubernetesユーザーにとってさらに役立つ機能が追加されていくと考えられます。
Helm & Kustomizeをあわせて活用するメリット
HelmとKustomizeを組み合わせることで、Kubernetesへのデプロイをより柔軟かつ効率的に行えます。ここでは、両者を併用するためのステップを簡単に示します。
前準備:Kubernetesクラスターの用意
Minikubeや主要クラウドプラットフォーム(GKEやEKSなど)でクラスターを用意し、kubectlを操作できる状態にしてください。
1. Helmをセットアップ
OSに応じてHelmをインストールします。
# macOS:
brew install helm
# Windows:
choco install kubernetes-helm
# Ubuntu:
snap install helm --classic
2. Kustomizeの導入
Kustomizeの実行ファイルを取得し、PATHに通します。
curl -s "https://raw.githubusercontent.com/kubernetes-sigs/kustomize/master/hack/install_kustomize.sh" | bash
mv kustomize /usr/local/bin/
Helmチャートの作成
Helmではhelm create my-chart
でベースチャートを自動生成できます。
helm create my-chart
生成されたmy-chart
ディレクトリ内のファイルを、アプリ要件に合わせてカスタマイズしてください。
Kustomizeの設定
Kustomizeはkustomization.yamlにリソース定義やパッチを記述する仕組みです。必要に応じてdeployment.yamlなどを同ディレクトリに配置します。
# kustomization.yaml
apiVersion: kustomize.config.k8s.io/v1beta1
kind: Kustomization
resources:
- deployment.yaml
続いて、kustomize build .
でペアになっているYAMLを統合できます。
HelmとKustomizeをつなぐ
Helm 3.1.0以降のポストレンダリング機能を使い、Helmで生成したマニフェストをKustomizeでさらに加工できます。
helm template my-chart . | kustomize build .
このコマンドでヘルムの出力をKustomizeが受け取り、最終的なYAMLが得られます。
Kubernetesへの適用
最後にkubectl apply
を使ってクラスタに適用します。
helm template my-chart . | kustomize build . | kubectl apply -f -
これでHelmチャートをベースにKustomizeのoverlayで調整したリソース定義がクラスタに適用されます。
こうした手順を踏むと、Helmのパッケージ管理力とKustomizeの柔軟なカスタマイズ力を同時に得られます。
よりスムーズにKubernetesを扱うために、HelmとKustomizeの活用方法を最適化しましょう。ここでは、それぞれのツールで押さえておきたいポイントをまとめます。
Helmのポイント
Kustomizeのポイント
Helm & Kustomizeまとめ
Techniques | Helm | Kustomize |
---|---|---|
アプリの組み立て | Helm Charts | Overlayを使用 |
運用の共通化 | 可 | 可 |
名前空間の分離 | 推奨 | 推奨はない |
セキュリティ対策 | SecretとRBACを活用 | Secret生成など標準機能を活用 |
検証手段 | helm test等 | 標準なし |
環境変数の扱い | values.yamlなど | overlayで差し替え |
それぞれの特性を理解し、プロジェクトの要件や開発体制に合わせて最適な手法を選ぶことで、Kubernetesの運用効率やセキュリティを大幅に高められます。
HelmとKustomize、それぞれの特徴を総合的に理解する
Kubernetesにおける構成管理を語るうえで、HelmとKustomizeは外せません。どちらを使うべきかは最終的に運用者やプロジェクトの方向性に左右されます。
Helm:Kubernetes活用を効率化する強力ツール
Helmはチャートという形でリソースをまとめあげ、依存管理を一手に引き受けます。複雑なサービスを扱うプロジェクトで真価を発揮し、ロールバックやバージョン管理も含む強力な機能が特徴です。ただし、テンプレート利用や過去のTillerにまつわるセキュリティ懸念があり、運用には多少の学習が必要です。
Kustomize:ネイティブ機能を最大限に生かす
一方のKustomizeは、テンプレートに頼らず、宣言的なYAMLの差分管理を重視します。オーバーレイにより環境別の設定を最小限の差分で管理しやすく、導入ハードルが低いのが利点です。ただし、依存関係制御やバージョン管理は限定的であり、多数のコンポーネントを集約する場合は工夫が要ります。
両者の対比
指標 | Helm | Kustomize |
---|---|---|
テンプレート活用 | 活発 | 非採用 |
マルチレイヤー運用 | 問題なく対応 | 柔軟に対応 |
依存関係管理 | 強力 | 機能なし |
バージョン管理 | 充実 | 標準機能は控えめ |
利用者数 | 大規模 | 比較的少なめ |
最適な選択をするには
大規模かつ依存関係をしっかり管理する必要があるならHelm、設定ファイルをシンプルに保ちつつ環境ごとの調整を頻繁に行いたいならKustomizeという視点が目安になります。
最終結論
ヘビーなパッケージ管理やバージョン管理を必要とするならHelmが頼りになり、宣言型のシンプルな運用を好むならKustomizeが便利です。とはいえ、一概にどちらかだけを選ぶのではなく、場面に合わせて使い分ける柔軟なアプローチも視野に入れるとよいでしょう。
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