監視ツールの概要: PrometheusとGrafana
IT運用では、システムやアプリをスムーズに稼働させるために監視が重要です。監視とは、データを収集・加工・分析し、大きな問題に発展する前に原因を特定して対処することを目的としています。こうした作業を支援する優れたツールとして、IT担当者や開発者の間で人気を集めているのがPrometheusとGrafanaです。
PrometheusとGrafanaはいずれも無償で使える監視ツールで、システムやアプリのパフォーマンスを把握する上で役立ちます。現代的なITインフラの複雑性に対応できるよう設計されており、大規模なネットワークの監視にも必要十分な機能を備えています。
PrometheusはCloud Native Computing Foundation (CNCF) の代表的なプロジェクトとして知られ、システムやサービスの監視を行う仕組みです。あらかじめ設定しておいたターゲットから一定間隔でメトリクスを収集し、ルール表現を評価して結果を表示したり、条件が揃えばアラートを発火したりできます。
一方のGrafanaは、オープンソースのマルチプラットフォーム対応分析・可視化ツールです。対応データソースと連携することでダッシュボード上にグラフやチャートなどを表示し、データをわかりやすくビジュアル化します。ウェブ経由でアラートを発行する機能も備えているので、データ可視化において欠かせない存在です。
PrometheusとGrafanaの概要
Prometheusの最大の特徴はメトリクスを使った監視です。時系列データベースに情報を蓄積し、独自のクエリ言語を用いてデータを分析できます。特にPrometheusは時系列データをメトリック名とキー・バリューのラベルで扱う多次元データモデルを採用している点が独特です。
Grafanaはデータ可視化ツールとして機能し、データの即時インサイトを得やすくします。Prometheusなど幅広いデータソースに対応し、データを豊富な表示形式で見やすく描画できます。さらにGrafanaの堅牢なアラート機能により、異常を素早く検知して通知を受け取ることもできます。
PrometheusとGrafanaの連携
PrometheusとGrafanaはそれぞれ単体でも強力ですが、同じ監視スタックで組み合わせると互いの力を高め合います。Prometheusが得意とするのは時系列データの収集・保存で、一方でデータの描画機能はシンプルです。そこでGrafanaを使うと、Prometheusが保持するデータを呼び出し、視覚的にわかりやすいダッシュボードを作成できます。この2つを併用することで、データの取得から可視化まで網羅的な体制を整え、システムやアプリを効果的に監視しやすくなります。
大きな違い
PrometheusとGrafanaはよく併用されるため混同されがちですが、その役割は異なります。Prometheusはバックエンド監視が中心でメトリクスの収集・保存を行います。バックエンドで発生する多種多様なデータを効率的に集める仕組みがあります。
対してGrafanaはデータの可視化に特化しており、さまざまなデータソースから情報を引き出してパネルを組み合わせたダッシュボードを作成できます。Prometheus以外のデータソースにも対応しており、幅広い情報を統合表示することが特徴です。
今後のセクションでは、それぞれのツールが持つ機能やメリット、導入手順、データの処理やアラート管理、拡張性やパフォーマンス、連携方法、プラグイン、そして多様な監視環境での使い道について掘り下げます。さらにセキュリティ面や価格体系、コミュニティのサポート状況も比較し、最後には事例も交えて実運用での使い方を紹介します。これらを総合的に理解することで、PrometheusとGrafanaのどちらが貴社の監視要件に合致するか判断しやすくなるでしょう。
Prometheusは、高性能かつコスト面でも優れた早期警告や監視を行うツールとして注目されています。元々はSoundCloudによって開発され、2012年に一般公開されました。強力かつ柔軟性のある機能により、多くの企業が導入しています。クラウド環境で活用されることが多く、アラートと監視を行う仕組みとして利用されています。
Prometheusをさらに詳しく見る
Prometheusは、従来のようにアプリ側やシステム側がデータを監視システムへ送るプッシュ型でなく、あらかじめ登録したターゲットから一定間隔でメトリクスを取りに行くスクレイプ方式を採用しています。シンプルな導入が可能で、監視側の負荷を制御しやすい点が利点です。
Prometheusでは時系列データとして情報を記録しており、同じメトリクス名とラベルの組み合わせを使ったタイムスタンプ付きのデータポイントを管理します。この設計により、効率的かつ軽快なクエリやデータ管理ができるようになっています。
Prometheusの主な構成要素
Prometheusは以下の主要コンポーネントで構成されています:
Prometheusのデータモデルを理解する
Prometheusはユニークなデータモデルを持ち、すべての時系列データにメトリック名とラベル(キー・バリュー)の組み合わせで一意のIDを付与します。メトリック名とラベルにより、多次元的なデータ管理が可能です。
たとえば、Prometheusのメトリクスは以下のように記述されます:
entries_logged_total{method="POST", handler="/messages"}
上記の例では、entries_logged_totalがメトリック名であり、methodとhandlerがラベルです。これらのラベルが追加情報を付与します。
PromQLを使ったデータ抽出
Prometheusに組み込まれている強力なクエリ言語PromQLを使うと、複数の時系列から即時のデータ抽出や集計が可能です。抽出結果はグラフ表示やテーブル表示、HTTP API経由で外部システムに取り込むなど自由に扱えます。
以下にPromQLでデータ抽出する例を示します:
rate(entries_logged_total[5m])
このクエリでは、直近5分におけるentries_logged_totalの平均的な秒間増加率が算出されます。
Prometheusは、強力なデータモデルとクエリ機構により、幅広い監視ニーズに応えられる優れた選択肢です。また、オープンソースプロジェクトとしてコミュニティによる活発なサポートがある点も魅力です。ただし、活用範囲によっては必ずしも万能ではなく、用途に応じた使い分けが必要になる場合もあります。
Grafanaは、マルチプラットフォーム環境に対応したウェブベースの分析・インタラクティブ可視化ツールです。多種多様なグラフ形式を扱え、プラグインによる拡張性も高く、ログ分析分野においても注目されています。
Grafanaの仕組み
Grafanaは基本的にクライアント・サーバ型の構成です。バックエンド側のサーバではAPIリクエストの受付やセキュリティ管理、データソースとのやり取りなどを担当します。フロントエンドはブラウザ上で動作し、バックエンドと通信しながらデータを可視化します。バックエンドはGo言語、フロントエンドはJavaScript/TypeScript(React)で開発され、OSに依存しない動作が可能です。
データ連携とプラグイン
GrafanaはPrometheus、InfluxDB、Elasticsearch、Graphiteなど多様なデータソースに対応しており、さまざまな環境で柔軟に利用できます。
さらに、プラグインの仕組みによりGrafanaの機能を拡張できる点も魅力です。追加のデータソース、パネル、アプリなどを組み込むことで、自分に合ったデータ可視化環境を構築しやすくなっています。
可視化とダッシュボード
Grafanaの核となるのがビジュアル面での柔軟性です。ひとつのダッシュボードに複数のパネルを配置し、それぞれで異なるソースのデータをグラフやテーブルなど多彩な形式で表示できます。グラフやテーブルはもちろん、ヒートマップや値のみを示す表示などオプションが多数あります。
テンプレート化機能もあり、ダッシュボードに変数を設定して、ユーザーが動的に値を切り替えられるようにすることも可能です。
アラート通知
Grafanaには使いやすいアラート通知システムがあります。指定したデータソースに対して条件式を定義し、その条件を満たしているかGrafanaが継続的に監視します。条件が成立すると、メールやSlack、PagerDutyなど様々なチャネルに即時通知が可能です。
セキュリティ対策
セキュリティ面では、Grafanaはデータソースを代理接続(プロキシ)する仕組みを採用しており、ユーザーのブラウザから直接データソースへアクセスしないようにしています。そのほかにもセキュアクッキーやHTTPSなどを使った通信の暗号化もサポートしており、データの安全性に配慮されています。
こうした特徴から、Grafanaは使いやすく拡張性も高いデータ可視化・監視プラットフォームとして評価されています。多数のデータソースとの連携、プラグイン拡張、アラート機能、セキュリティ対策などが備わっており、モニタリングや可視化において頼りになる存在です。
役割と特徴
Prometheusは監視と時系列データの保存を担うツールです。あらかじめ指定した間隔でサービスやシステムのメトリクスを収集して保存し、条件に応じてアラートを発火できます。特にマイクロサービス環境での監視に適しており、高い拡張性を誇ります。
対してGrafanaは時系列のメトリクスをグラフで表示したり、複数のソースからデータを組み合わせたりする可視化ツールとしての役割を担います。データ収集や保存の仕組み自体は持ち合わせていませんが、多彩な表現力が最大の強みです。
Prometheus | Grafana |
---|---|
監視・時系列データベース | データ可視化ツール |
メトリクスの収集と保存を管理 | データの収集や保存は行わない |
設定した条件でアラートを発火 | 自在なダッシュボードの作成を支援 |
データの取り扱いと保存
Prometheusはプル方式で監視対象からデータを取得し、そのデータをPrometheus内部に保存します。分散環境でも動作しやすく、ターゲットが一時的に応答しなくてもそれを検知できます。
一方のGrafanaはデータを収集・保存しません。代わりに、Prometheusなどのデータソースから情報を取り出してグラフィカルに表示する役割を担っています。
クエリ言語
Prometheusは独自のPromQLを持ち、時系列データの取り出しや集計を柔軟に行えます。強力なクエリ機能を備えているため、複雑なモニタリングシナリオにも対応できます。
Grafanaは自前のクエリ言語を持たず、接続先のデータソース側のクエリを利用します。Prometheusのデータを可視化する際はPromQLをGrafana上で使うイメージです。
アラート機能
PrometheusにはAlertmanagerが組み込まれており、特定の条件を満たしたときにアラートを生成し、重複排除やグルーピングを行った上でメールやPagerDuty、OpsGenieなどへ通知可能です。
Grafanaにもアラート機能はありますが、あくまで可視化に付随するもので、ユーザーにとって映像的にわかりやすい形でアラートを扱えるのが特徴です。また、多様な通知チャンネルへ送る設定も柔軟にできます。
互換性
Prometheusは多彩なサービスディスカバリ機能に対応し、手を加えなくても複数のサービスを監視下に置けます。さらにGrafanaなどともスムーズに連携できます。
GrafanaはPrometheusを含むさまざまなデータソースに接続可能で、幅広い環境でのデータ可視化を助けます。
このように、PrometheusとGrafanaは一部機能が重なるようでいて得意分野が異なります。Prometheusは監視とアラート管理を中心に、Grafanaは可視化能力とダッシュボード作成に秀でています。両者を同時に利用すると包括的な監視ソリューションとしてまとまりが良いでしょう。
Prometheusは多機能で万能感があり、多くのユーザに支持されています。SoundCloudにより生まれ、後にCloud Native Computing Foundationの管理下に入り、時系列データベースと監視機能を提供するツールとして広く活用されています。
総合的な監視とアラート
システム全体を監視対象とし、サーバやデータベース、アプリだけでなく、マイクロサービスやコンテナなどあらゆる環境をチェックできます。HTTPエンドポイントから重要な数値を収集し、問題を早期発見しやすい設計です。
アラート機能には柔軟性があり、メトリクスに対してルールを設定して条件が満たされたら通知を送る仕組みが整っています。障害に即応することでダウンタイムを短縮できます。
多次元データモデルと独自クエリ言語
Prometheusは多次元データモデルを採用し、メトリック名とラベル(キー・バリュー形式)で管理するため、高いカーディナリティの監視が可能です。
また、PromQLと呼ばれるクエリ言語を備えており、ラベルの条件指定や数値処理を強力に行えるため、詳細な分析がしやすいです。
単独稼働ノード
各サーバノードは独立して動作する設計なので、ネットワーク共有ストレージなどに依存しません。これにより、ネットワーク障害や一部システムが落ちた場合でもデータ収集が継続しやすく、信頼性の高い運用ができます。
高パフォーマンスなストレージ
Prometheus独自の時系列データストレージは長期間のデータを保管でき、復旧機能も充実しています。長期的にデータを蓄積したい場合にも適しています。
連携性と豊富なクライアントライブラリ
Prometheusには多くのクライアントライブラリが用意されており、JavaやGo、Pythonなど、10以上の言語でメトリクスを組み込みやすくなっています。
さらにサービスディスカバリ機能や静的ターゲットの設定など、KubernetesやConsulなどのお気に入りのサービスディスカバリとも連携可能です。
データ表示
Prometheus自体にも簡易的な表現ツールが備わっていますが、より高度なビジュアル化を行うにはGrafanaとの組み合わせが推奨されています。
Prometheusを選ぶ理由
Prometheusは大規模コミュニティのオープンソースプロジェクトであることに加え、以下のメリットがあります:
このようにPrometheusは汎用性が高く、信頼性に優れた監視向けソリューションとして広く選ばれています。多様な機能が揃っているため、総合的な監視を行いたい企業にとって魅力的な選択肢です。
無償でありながら強力なデータ可視化ツールとして人気の高いGrafanaは、PrometheusやGraphite、InfluxDB、Elasticsearchなど、幅広いデータストアと連携できます。高い柔軟性と深い分析オプションを提供することでも評価されています。
Grafanaとは
Grafanaの強みは洗練された可視化機能です。時系列データを折れ線グラフや円グラフ、ヒートマップなど豊かな表現で表示するほか、自分の好みに合わせて見やすい形で表示できる点が魅力です。
動的なデータ可視化
Grafanaはデータを多様なグラフ形式で表すことに優れ、探索的なデータ分析がしやすい設計です。色や軸ラベル、凡例の表示なども細かくカスタマイズできます。
即時アラート
重要なメトリクスを継続的に監視し、設定した条件値を超えた場合は即時に通知する仕組みを備えています。メールやSlackなどのチャネルへ迅速にアラートを飛ばせるため、障害の早期対応につなげやすいです。
ダッシュボードのカスタマイズ
Grafanaの大きな魅力として、カスタムダッシュボードを簡単に作成できることが挙げられます。一つのダッシュボードに複数のデータソースから引き出したメトリクスを並べられるので、チーム内での情報共有がしやすくなります。
Grafanaが優れている点
Grafanaの利点は可視化だけに留まりません。オープンソースであるため、多分野のユーザー同士が知識を持ち寄り、機能の改善や新機能追加が盛んに行われています。誰でも扱いやすいUIを目指し続けているところもポイントです。
活発なコミュニティ
Grafanaには活気あるコミュニティがあり、既存機能の改善や新機能の提案が継続的に行われています。ドキュメントやチュートリアルも充実しており、初心者でも導入しやすいです。
扱いやすいインターフェース
UIは初学者にもわかりやすいデザインになっており、グラフの作成やアラート設定をスムーズに行うことができます。技術に不慣れな方でも扱いやすい点は組織導入時に大きな利点です。
拡張性
Grafanaはプラグインによる拡張が可能で、多種多様なデータソースやパネルプラグインを取り込みやすい構造になっています。これにより、要求に応じて機能を柔軟に追加できます。
このようにGrafanaは総合的かつ拡張性が高いデータ分析・監視プラットフォームとして高い評価を受けています。コミュニティ主導の開発で進化を続ける一方で、使いやすいUIや容易な拡張が魅力となり、多くのユーザーに選ばれています。
Prometheusを導入する手順は比較的わかりやすいです。ソフトウェアのダウンロードから設定、実行までの流れを説明します。
ステップ1: Prometheusのダウンロード
まず、公式のPrometheusサイトからPrometheusをダウンロードします。Windows、macOS、LinuxなどOSごとにバイナリが用意されていますので、ご利用のOSに合うものを選びます。
# Linuxの場合のダウンロード例
wget https://github.com/prometheus/prometheus/releases/download/v2.30.3/prometheus-2.30.3.linux-amd64.tar.gz
ステップ2: ファイルの展開
ダウンロードが完了したらファイルを解凍します。LinuxやmacOSの場合はtarコマンドを使って解凍できます。
# ファイルの解凍例
tar xvfz prometheus-*.tar.gz
ステップ3: Prometheusの設定
解凍後、prometheus.ymlファイルを編集して必要な設定を行います。どのターゲットを監視対象にするか、何秒間隔でスクレイプするかなどを指定します。
# Prometheus設定ファイルの例
global:
scrape_interval: 15s
evaluation_interval: 15s
scrape_configs:
- job_name: 'prometheus'
static_configs:
- targets: ['localhost:9090']
この例ではlocalhost:9090で稼働中のPrometheus自身を15秒間隔でスクレイプする設定です。
ステップ4: Prometheusの起動
設定が終わればPrometheusを起動します。展開したディレクトリに移動して以下のコマンドを実行してください。
# Prometheusの起動コマンド
./prometheus --config.file=prometheus.yml
これでPrometheusが設定どおりにスクレイプを開始します。
ステップ5: PrometheusのWebインターフェースにアクセス
Prometheusを起動したら、ウェブブラウザでhttp://localhost:9090にアクセスします。そこではPromQLによるメトリクス検索やスクレイプ対象の確認などが行えます。
ステップ6: アラートルールの設定
Prometheusではアラートルールを別ファイルで管理し、prometheus.ymlでそのファイルへのパスを指定できます。
# アラートルール例
groups:
- name: example
rules:
- alert: HighRequestLatency
expr: job:request_latency_seconds:mean5m{job="myjob"} > 0.5
for: 10m
labels:
severity: page
annotations:
summary: High request latency
この例では、job="myjob"の平均リクエストレイテンシが0.5秒を超え、10分間続いたらアラートを発火するように設定しています。
以上の手順に従うだけで、Prometheusで監視を始められます。細かい設定を変えることで、監視の粒度や内容を自由に調整できます。
ここではGrafanaを導入してデータ可視化を行うまでの流れを解説します。ソフトウェアの入手からインストール、設定方法までを順を追って確認しましょう。
Grafanaの入手
まずはGrafanaをダウンロードします。GrafanaはWindows、macOS、Linuxなど複数のOSに対応しています。公式サイトから該当OSのバージョンを選んでダウンロードしましょう。
手順は以下のとおりです:
Grafanaをインストール
ダウンロードが完了したら、OSに合わせてインストールを行います。
Windowsの場合
ダウンロードしたファイルをダブルクリックし、インストーラの指示に従います。インストール先を指定し、「Install」ボタンを押せば導入できます。
Linuxの場合
Linuxではターミナルを使ってインストールします。以下の手順を参考にして下さい:
sudo dpkg -i grafana_<version>_amd64.deb
Grafanaの設定
インストール後は、Grafanaのサーバ起動やデータベース連携、ウェブサーバ部分の設定を行います。
Grafanaサーバの起動
以下の手順でサーバを起動できます:
/etc/grafana/grafana.ini
など)http_port
やdomain
を設定データベースとの連携
標準ではSQLiteが使われますが、MySQLやPostgresへ変更も可能です。以下のように進めます:
type
やhost
、user
、password
などを設定ウェブサーバ設定
最後にウェブサーバの設定を行います:
protocol
、http_addr
、http_port
を記載準備ができたらsudo service grafana-server start
などを使ってサーバを起動します。
以上がGrafanaの導入手順です。直感的に操作しやすいUIなので、すぐにダッシュボードを作成して監視し始められます。
監視や可視化の世界で注目されるPrometheusとGrafanaは、それぞれ独自の方法でデータを管理しています。ここでは両者のデータの扱い方の違いを確認しましょう。
Prometheus: プル型のデータ収集
Prometheusでは監視対象が用意するHTTPエンドポイントから定期的にメトリクスを取得するプル方式を採用しています。この方式はアーキテクチャがシンプルで、監視の間隔も自由に設定しやすいメリットがあります。
ただし、監視対象にアクセスできない状況ではデータが取れないという弱点もあります。
設定例としては、Prometheusの設定ファイルに以下のように記述します:
scrape_configs:
- job_name: 'example_task'
scrape_interval: 5s
static_configs:
- targets: [':']
Grafana: 可視化に特化
対してGrafanaは自らデータを収集・保存せず、Prometheusなどからデータを取得して可視化します。UIが洗練されており、複数のパネルを1つのダッシュボードにまとめて表示させるなど、視覚的に全体像を把握しやすいです。
Dashboard設定例としては以下のようなJSONを想定できます:
{
"dashboard": {
"id": null,
"titulo": "Newly Created Dashboard",
"panels": [
{
"type": "graph",
"datasource": "Prometheus",
"goals": [
{
"expr": "rate(total_http_requests[5m])"
}
]
}
]
}
}
データ管理の比較
特徴 | Prometheus | Grafana |
---|---|---|
データ収集 | 監視対象からプル型で取得 | データソースから取得(自身は収集しない) |
データ保存 | 独自の時系列データベースに保存 | 保存は行わず、可視化に特化 |
可視化機能 | 基本的なグラフ表示 | 高度な可視化とダッシュボード作成 |
まとめると、Prometheusは監視データの収集・保存が得意で、Grafanaは取り込んだデータを可視化するのが得意です。双方を使い分けたり組み合わせたりすることで、より充実した監視体制を構築できます。
PrometheusとGrafanaはいずれもデータ可視化ができますが、そのUIは大きく異なります。用途に合わせてどちらが使いやすいかを検討するのが大切です。
Prometheus: シンプルで実用的
PrometheusのUIは必要最低限の機能に絞られています。メイン画面にはテキストボックスがあり、そこでPromQLを入力してメトリクスを検索します。結果をテーブルやグラフで表示できますが、グラフの表現力はシンプルです。
たとえば以下のようなPromQLを入力して簡易グラフを確認できます:
http_requests_total{job="apiserver", handler="/api/comments"}
このクエリによって、job="apiserver"の"/api/comments"ハンドラに対するHTTPリクエストの総数が特定の時間範囲にわたって表示されます。
Grafana: 視覚表現が豊かなUI
一方でGrafanaは、可視化の幅が格段に広いUIを備えています。ダッシュボード上に複数のパネルを配置し、それぞれ別のメトリクスを表示できます。折れ線グラフだけでなく、棒グラフや円グラフ、ヒートマップなどあらゆるチャートが利用可能です。テーマや色、注釈の追加など、細部までカスタマイズが効くのも魅力です。
たとえば以下のようなJSONを作成すれば、2つのパネル("HTTP Requests"と"Error Rate")を表示するダッシュボードが定義できます:
{
"dashboard": {
"id": null,
"title": "Production Overview",
"panels": [
{
"type": "graph",
"title": "HTTP Requests",
"targets": [
{
"expr": 'http_requests_total{job="apiserver", handler="/api/comments"}'
}
]
},
{
"type": "singlestat",
"title": "Error Rate",
"targets": [
{
"expr": 'rate(http_requests_total{status_code=~"5.."}[5m])'
}
]
}
]
}
}
比較
項目 | Prometheus | Grafana |
---|---|---|
クエリ記法 | PromQL | PromQLやSQLなど接続先依存 |
グラフの表現力 | 基本レベル | 高度で多彩 |
カスタムダッシュボード | 不可 | 可能 |
注釈機能 | なし | あり |
外観の自由度 | 低い | 高い |
つまり、Prometheusはあくまで監視データをクエリしてシンプルに可視化するもの、Grafanaはリッチな可視化を行うためのツールという位置づけです。高度なダッシュボードが必要ならGrafana、素早くメトリクスをチェックできれば十分という場合はPrometheusだけでも対応可能です。
アラート管理は、監視ツールがシステム障害や問題を即座に把握するための要の機能です。PrometheusもGrafanaもアラート通知ができますが、実装方法に違いがあります。
PrometheusにはAlertmanagerという専用の仕組みがあり、Prometheusサーバが発火したアラートを集約して重複排除・グルーピングを行い、最終的にメールやPagerDuty、OpsGenieなどに振り分けます。アラートを抑制する機能も備えています。
Grafanaにもアラート管理機能がありますが、Grafanaのダッシュボード上で直接アラートを定義・管理できるのが特徴です。ビジュアルを見ながら設定できるので理解しやすいという利点があります。
PrometheusのAlertmanager
PrometheusのAlertmanagerは設定ファイルで動作を制御しており、通知先やアラート発火条件を自由に書き込めます。
代表的なアラートルールは次のようになります:
clusters:
- title: sample
requirements:
- alert: SignificantLatencyDelay
term: job:request_delay_seconds:average5m{job="myjob"} > 0.5
over: 10m
labels:
seriousness: page
notes:
total: Significant request delay
この例では「myjob」の平均リクエスト遅延が0.5を上回り、10分以上継続したらアラートを発火します。ラベルでアラートの重大度などを指定し、Alertmanagerが通知振り分けを行います。
Grafanaのアラート機能
Grafanaでは、パネルごとにアラート設定が可能です。設定手順は以下のとおりです:
比較
項目 | Prometheus | Grafana |
---|---|---|
アラート定義 | 設定ファイルで記述 | UI上で設定 |
アラートの振り分け | Alertmanagerあり | 専用の仕組みはなし |
アラートのグルーピング | 可能 | 不可 |
アラート抑制 | 可能 | 不可 |
ミュート | 可能 | 不可 |
Alertmanagerはアラートの転送・抑制・重複排除など高度な機能を備えていますが、設定ファイルによる管理がやや難しい場合もあります。
一方のGrafanaは視覚的にアラートを管理できるものの、Alertmanagerのようなアラートの振り分けや抑制の機能はありません。どちらを使うかは必要とする機能や運用スタイルによって異なるでしょう。
ここでは、両ツールのパフォーマンスと拡張性について比較します。
Prometheus
Prometheusは独立稼働を想定しており、障害が起きても単体で動作し続けられます。ネットワーク障害やほかのインフラが停止した際にも動作の継続が可能なため、問題発生時の原因追跡に有用です。
一定間隔でターゲットからメトリクスを取得し、指定ルールを評価するよう設計されているため、ネットワークが不安定でもメトリクスの取得を続けられます。
Grafana
Grafanaは可視化を担うアプリで、データ取得はバックエンドのデータソースに依存します。したがって、Grafana自体のパフォーマンスはデータソースをどれだけ効率的に問い合わせられるかによって影響を受けます。大規模環境ではデータソース側の負荷も考慮する必要があります。
Prometheus
Prometheusは数百万程度の時系列データまで1つのサーバで対応可能とされています(ハードウェアや運用形態によって異なります)。ノードはあくまで単独動作が基本ですが、フェデレーション機能を使って複数Prometheusを連携させることもできます。
直接のクラスタリング機能や分散ストレージには対応していませんが、スケールアウトが必要なケースではインフラ面で冗長化するか、フェデレーションで対応する形を取ります。
Grafana
Grafanaはデータを保存しないため、理論上はデータソースが対応できる規模まで拡張できます。ただし多くのメトリクスを扱う場合は問い合わせが増えるため、データソースやGrafanaサーバの負荷が高まります。
ユーザー数に関してはGrafanaがユーザ認証や権限管理を持っているので、同時アクセスユーザーが増えても対応しやすいです。
パフォーマンスとスケールの比較
観点 | Prometheus | Grafana |
---|---|---|
パフォーマンス | 高い(単独動作、ローカルストレージ) | データソースに依存 |
スケーラビリティ | 数百万シリーズまでは良好 | データソースとユーザ管理機能で拡張 |
要するに、Prometheusは単体構成でも高パフォーマンスでそこそこのスケールにも耐えられますが、高可用性クラスタなどの機能は標準ではありません。Grafanaはユーザー管理と柔軟性に優れていますが、そのパフォーマンスは裏側のデータソースに大きく左右されます。運用規模や要件に合わせて選択や組み合わせを検討するとよいでしょう。
PrometheusとGrafanaはどちらも連携や拡張性の面で優秀なツールですが、そのアプローチには違いがあります。
Prometheus: システム連携とエクスポーター
Prometheusはサービスディスカバリ機能が充実しており、KubernetesやEC2、Azureなど幅広い環境で動的にメトリクスを収集できます。
プラグイン型の拡張方式というよりは、エクスポーターという別アプリを使ってメトリクスをPrometheusが読み取れる形式に変換する仕組みが一般的です。たとえばMySQLやPostgreSQL、RabbitMQ、Kafkaなど、多数のエクスポーターが存在します。
以下はPythonで簡単なエクスポーターを書く例です:
from prometheus_client import start_http_server, Summary
import random
import time
REQUEST_TIME = Summary('request_processing_seconds', 'Time spent processing request')
@REQUEST_TIME.time()
def process_request(t):
time.sleep(t)
if __name__ == '__main__':
start_http_server(8000)
while True:
process_request(random.random())
Grafana: 多彩なプラグインと容易な連携
Grafanaでは「プラグインシステム」が充実しており、新しい可視化パネルや追加のデータソースなど機能を追加しやすいです。
標準でPrometheusやInfluxDB、Elasticsearchなどと連携できますが、プラグインでさらに多くのデータソースにも対応します。
プラグインはパネル型、データソース型、アプリ型の3種に大別でき、用途に応じて自由に追加できます。
Grafanaでプラグインをインストールする例は以下のようになります:
grafana-cli plugins install grafana-piechart-panel
service grafana-server restart
このコマンドでPie Chart Panelのプラグインをインストールし、Grafanaを再起動することで新しい機能が使えるようになります。
比較
項目 | Prometheus | Grafana |
---|---|---|
システム連携 | サービスディスカバリやプルモデルを活用 | 多数のデータソースを標準サポート |
プラグイン拡張 | エクスポーターが中心 | 専用プラグインシステムが豊富 |
柔軟性 | プルモデルと多様なエクスポーターで高い | プラグインとデータソース対応の多さで高い |
つまり、Prometheusはエクスポーターを通じた広範なメトリクス連携に長け、Grafanaはプラグインを介して可視化機能やデータソースを柔軟に拡張できます。どのような場面でどう活用するかは、目的によりけりです。
Prometheusはモダンクラウド環境に最適化された監視システムとして、Kubernetes環境の維持管理にも大きく貢献します。特にDevOpsの現場において活躍し、Kubernetesクラスターの安定稼働を支える存在です。
KubernetesエコシステムにおけるPrometheusの役割
PrometheusはKubernetesと連携し、クラスタ内部で動作するコンポーネントや一時的なジョブからのデータを即時で収集・観測できます。
独自のサービスディスカバリ機能によりKubernetes内部を直接探索し、新しくデプロイされたサービスやポッドのメトリクスも自動的に取得しやすいです。
PrometheusがモニタリングするKubernetesのメトリクス
Prometheusは以下のようなKubernetesに関するメトリクスを監視します:
Prometheus Operatorでさらに効率化
Prometheus OperatorというKubernetes向けの拡張機能を使うと、Resource定義でPrometheusを管理できるようになります。ServiceMonitorなどのカスタムリソースを使って監視対象のサービスを自動検出し、設定を簡略化可能です。
Prometheus Operatorの主な機能:
KubernetesとPrometheusの組み合わせの強み
Kubernetes上に複数のマイクロサービスを展開している場合、Prometheusによる監視が欠かせない存在となります。リアルタイムでリソース利用状況やパフォーマンスを把握でき、問題の早期解決やスケールアップ/ダウンの最適化に役立ちます。
このように、PrometheusはKubernetes環境を支える強力な監視基盤として、多くのDevOpsチームで採用されています。
IoT(モノのインターネット)の普及で、デバイスから得られる膨大なデータの監視・可視化はますます重要になっています。そんなIoT分野で強みを持つのがGrafanaです。
IoT監視へのGrafanaのアプローチ
Grafanaは多様なデータベースとの連携を重視しているため、特にInfluxDBやTimescaleDBなど、IoT向けによく使われる時系列データベースと相性が良いです。成長著しいIoT領域では、デバイスやセンサーから絶えず大量のメトリクスが流れ込みますが、Grafanaならダッシュボードで一元表示できます。
また、柔軟なパネル設定により、温度・湿度・振動など多彩なセンサー情報をリアルタイムに把握しやすいのも利点です。
可視化と分析
Grafanaはビジュアル表現が豊富なので、温度の推移やネットワーク遅延など、複数要素を単一画面にまとめて確認することができます。以下は温度データを可視化する設定例です:
// Grafanaダッシュボードパネルの設定例
{
"title": "Temperature Data",
"type": "graph",
"datasource": "InfluxDB",
"objectives": [
{
"measurement": "temperature",
"groupAsPer": [
{
"type": "time",
"val": ["$gap"]
},
{
"type": "tag",
"val": ["appliance"]
}
],
"display": [
[
{
"type": "field",
"val": ["value"]
},
{
"type": "average",
"val": []
}
]
]
}
]
}
上記のように、温度データを時系列とデバイスラベルでグルーピングし、平均を表示するようなダッシュボードを作成できます。
アラートと異常検知
Grafanaのアラート機能を活用すれば、温度が一定閾値を超えた場合にSlackやメールで通知するといった運用が可能です。問題を即座に把握して対処できるため、突然の不具合が業務に与える影響を抑えられます。
他ツールとの連携
さらにGrafanaは、MQTTブローカーやApache Kafka、AWS KinesisなどIoTで用いられるメッセージング・ストリーミング基盤との連携も行いやすいです。あらゆる地点のデータをGrafanaで集約することで、一括管理が可能となり、可視化と分析がスムーズに行えます。
こうしたことから、GrafanaはIoTデバイス監視にうってつけのプラットフォームになっています。高度な可視化、柔軟なダッシュボード構成、そして豊富な連携先が、複雑化するIoT環境の監視に大いに役立ちます。
監視ツールにおいて、セキュリティの確保は極めて重要です。PrometheusとGrafanaにはそれぞれ異なるアプローチのセキュリティ機能がありますので、両者の仕組みを比較してみます。
Prometheusのセキュリティ
Prometheusはプル方式を採用しており、監視対象のポートを外部公開せずに済むため、不正アクセスのリスクを下げるというメリットがあります。
通信暗号化としてTLSを設定でき、Basic認証もサポートしていますが、デフォルトでは無効なので明示的な設定が必要です。
ユーザ管理やアクセス制御はネイティブには備わっておらず、外部ツールやリバースプロキシを組み合わせて実装する形となります。柔軟性が高い反面、構築に追加作業が発生します。
Prometheusの主なセキュリティ特徴:
Grafanaのセキュリティ
GrafanaはHTTPSによる通信暗号化のほか、ユーザ管理やアクセス制御を内蔵しています。組織、チーム、ユーザといった階層的な構造で権限を細かく指定でき、小規模から大規模な運用まで対応しやすいです。
また、データソースへの直接アクセスをブラウザから許可せず、バックエンドが仲介する「プロキシモード」を採用できるため、セキュリティリスクを低減できます。XSSやCSRFなどの脆弱性への対策も充実しています。
Grafanaの主なセキュリティ特徴:
PrometheusとGrafanaのセキュリティ比較
PrometheusとGrafanaでは前提となる利用シナリオが異なるため、セキュリティ機能の設計にも違いがあります。Prometheusは外部ツール併用で柔軟な構成ができますが、Grafanaは標準で豊富なセキュリティ機能を提供します。
項目 | Prometheus | Grafana |
---|---|---|
通信暗号化 | TLS | HTTPS |
ユーザ管理 | 外部に依存 | 標準搭載 |
アクセス制御 | 外部に依存 | 標準搭載 |
攻撃対策 | 特になし | XSS, CSRF対策あり |
まとめると、即座に充実したセキュリティ機能を使いたい場合はGrafanaが便利です。Prometheusは別途設定が必要ですが、その分カスタマイズは効きやすいです。
監視ツールを選ぶ際には、導入や運用のコスト面も無視できません。ここではPrometheusとGrafanaそれぞれの費用ポイントを整理します。
オープンソースのメリット
PrometheusもGrafanaもオープンソースであり、ライセンスコストがかからないのが大きな魅力です。予算が限られる環境でも導入しやすく、機能の改変・再配布も自由に行えます。
ただし、導入・運用に伴う人件費やインフラ費用は別途発生する可能性がある点に留意が必要です。
Prometheusのコスト
Prometheus自体に使用料はありません。ただし、ローカルディスクに時系列データを保存するため、大量のメトリクスを集める場合はストレージコストがかさむかもしれません。
また、より高度なグラフ表示などを行いたい場合にはGrafanaなどを併用するケースが多いので、その分の運用コストも考慮が必要です。
Grafanaのコスト
Grafanaも基本的には無償ですが、有償版として「Grafana Enterprise」を提供しており、大企業向けの追加機能やサポートが含まれています。
たとえばLDAP拡張やレポート機能、データソースごとの詳細な権限設定などの要件があれば、有償版も検討に値します。
ハードウェア資源の消費は少なく、動作も比較的軽量ですが、大規模データを扱う場合や複数ユーザがアクセスするの場合はサーバリソースを手厚くする必要があります。
隠れたコスト: 導入・運用・サポート
無償ツールでも、複雑な環境への導入や大規模運用には構築コストや保守コストがかかり得ます。
問題が発生した際にはコミュニティサポートが役立ちますが、即応性が求められる場合には商用サポートを検討する必要があるでしょう。
総合的に見れば、PrometheusもGrafanaもライセンス費用がゼロという点は魅力的ですが、システム構築や人件費などのトータルコストを考慮して判断するのが大切です。
オープンソースの強みは活発なコミュニティサポートにあります。PrometheusとGrafanaはいずれも世界中の開発者・ユーザによって支えられていますが、微妙な違いも存在します。
Prometheusのコミュニティ
PrometheusはCloud Native Computing Foundation (CNCF)プロジェクトのひとつで、活気あるコミュニティが形成されています。メーリングリストやGitHubでバグ報告や機能提案が活発に行われ、ドキュメントも充実しています。
メリットは、CNCFという大きな枠組みに支えられ、Kubernetesをはじめとする多数のクラウドネイティブ技術との連携ノウハウが集約されていることです。
Prometheusの主なコミュニティ支援 | 有無 |
---|---|
メーリングリスト | あり |
GitHubでの活動 | あり |
豊富なドキュメント | あり |
ミートアップやカンファレンス | あり |
Grafanaのコミュニティ
Grafanaも活気あるコミュニティが存在し、ユーザフォーラムやSlackなどで質問や情報交換が盛んに行われています。GitHubでのプルリクエストやIssue対応も活発です。
Grafana Labsの開発チームも積極的にサポートを提供しており、ドキュメントもわかりやすく整理されています。
Grafanaの主なコミュニティ支援 | 有無 |
---|---|
コミュニティサイト | あり |
GitHubでの活動 | あり |
Slack | あり |
豊富なドキュメント | あり |
ミートアップ参加 | あり |
比較
Prometheusはメーリングリスト、GrafanaはコミュニティサイトやSlackなどでよりライブ感のあるサポート、という違いがあります。ドキュメントの充実度はいずれも高いものの、細部は各プロジェクトの文化や技術分野によって異なります。
いずれのコミュニティでも多くのユーザが情報を共有しているため、困ったときに助けを得やすいという点では共通しています。
ここでは、世界規模でインフラを運用するある企業のケースを見てみましょう。同社では多数のサーバやアプリを常時稼働させる必要があり、運用部門はパフォーマンス監視や障害の早期発見を求められています。そこで活用されているのがPrometheusとGrafanaです。
Prometheusでシステム負荷を監視
まずはPrometheusによってCPU使用率やメモリ使用量といった基本的なメトリクスが収集されます。PromQLを使って特定のサーバのみを絞り込んだり、長時間平均を出したりしやすいため、どのサーバが常時高負荷なのかが簡単にわかります。
たとえば以下のクエリで平均CPU使用率が80%を超えるケースを探せます:
avg_over_time(cpu_usage[1h]) > 0.8
Grafanaで可視化
Prometheusが収集した時系列データはGrafanaに渡され、ダッシュボードとしてまとめられます。サービスごとにパネルを用意し、CPUやメモリ、エラー率などをグラフィカルに表示することで、問題箇所を一目で把握できます。
例えば以下のようにGrafanaパネルを定義して、過去1時間の平均CPU使用率をグラフ化できます:
{
"datasource": "Prometheus",
"panelId": 1,
"targets": [
{
"expr": "avg_over_time(cpu_usage[1h])",
"format": "time_series",
"intervalFactor": 1,
"refId": "A"
}
],
"title": "Average CPU Usage (Last Hour)",
"type": "graph"
}
相互利用が生むパワー
このように、Prometheusは高頻度でデータを収集して蓄積し、Grafanaがそのデータをわかりやすく可視化するというコンビネーションが大きな効果を発揮しています。
結果として、トラブルの検知と対処のスピードが上がり、システムのパフォーマンスや信頼性を向上できています。
PrometheusとGrafanaはいずれも強力な監視ツールであり、それぞれ異なる得意分野と特徴を持っています。どちらか一方だけを選ぶか、それとも両方組み合わせて使うかは、環境や要望次第です。
自社に合う監視ツールの選び方
もし多次元データの監視や、コンテナ化されたマイクロサービス環境といった大規模なインフラを対象にするなら、Prometheusが理想的です。
一方、洗練されたダッシュボードと幅広いデータソース対応による可視化が必要なら、Grafanaが有効です。
二つを併用するメリット
Prometheusでメトリクスを大量収集・保存し、Grafanaでそのデータをリッチに可視化するという二刀流のアプローチは非常に一般的です。この方法なら相互の強みを最大限に引き出せます。
ツール | 主な強み |
---|---|
Prometheus | データ収集や保存、Kubernetesとの親和性 |
Grafana | 強力な可視化機能、複数データソース対応 |
パフォーマンスと拡張性
どちらも大規模監視に耐えうるアーキテクチャを備えています。Prometheusはサーバ単独での高性能が特徴で、Grafanaは高負荷がかかっても柔軟な拡張がしやすいです。
セキュリティとコミュニティ
どちらもコミュニティ主導で開発が進められ、セキュリティ機能も活発に整備・改善されています。オプションの有償サポートもあるため、ビジネス要件に応じて選べます。
コスト面
両ツールともオープンソースとして無償で利用できます。高度な機能やサポートが必要な場合、Grafanaは有償版が選択肢になりますし、Prometheusでは外部ベンダーのサービスを組み合わせる場合もあります。
結局のところ、PrometheusとGrafanaのどちらをメインに採用するか、または併用するかは、プロジェクトが必要とする監視データやインフラ構成、セキュリティ要件、そして予算感によって決まります。両方とも使う形がもっとも包括的な監視体制を整えられるケースが多いでしょう。
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