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Prometheus vs TimescaleDB 時系列データベース

時系列データベース入門

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時間の流れを基準にデータを整理する独特なデータベースとして、「Time Chronological Repositories (TCR)」があります。こうしたデータは「クロックベースの連続情報」と呼ばれ、さまざまな長さの間隔にわたって連続的に順序づけられたデータのまとまりから構成されています。収集は常に行われ、時間の推移に合わせて更新されます。

クロックベースの連続情報に触れる

クロックベースの連続情報は多くの分野で広く存在しています。例えば、株価の上下動から得られる金融データが将来的な市場変動を予測するために活用されたり、IoT機器からのデータやサーバーログがネットワーク監視のために分析されたりする例が挙げられます。特定の時間区切りごとに継続的に計測される読み取り結果は、クロックベースの連続データとして扱われます。

このデータには2つの特徴があります。1つめは、各データセグメントにタイムスタンプが含まれ、取得日時が明確にわかること。2つめは、秒から数時間までさまざまな間隔で定期的に積み重ねられていく点です。クロックベースの連続情報では、新しいデータが常に追加され、既存データへの変更はわずかにとどまる「追記型」構造を取ります。

TCRの重要性

従来のリレーショナルデータベースは、時系列データを扱うのが難しい場合があります。膨大なデータの急増や複雑なクエリへの対応でパフォーマンスが低下しがちです。

こうした課題に対処するため、TCRはまさに時系列データを扱うことを目的として設計されました。一般的なデータベースと比べ、以下のメリットがあります:

  1. 高速な処理: TCRはクロックベースの連続データを迅速に検索・集約できるように特別なデータ構造やストレージ方式を採用しています。
  2. スケーラビリティ: TCRは横方向の拡張を前提に設計され、複数ノードにデータを分散することで大型のデータ量にも対応しやすくなっています。
  3. 時間特化の機能: TCRには時系列データ向けの取り込みやダウンサンプリング、時間ベースの保管方針など専用の仕組みが組み込まれています。
  4. 効率的なデータ圧縮: TCRは圧縮技術を使って保管に要する容量を抑え、時系列データを長期間保管するコストを抑制します。

代表的なTCR

現在、さまざまな時系列データベースが注目されていますが、それぞれ長所と短所があります。中でもPrometheusとTimescaleDBは代表的な存在です。Prometheusはオープンソースの強力な監視・アラートツールとして利用され、TimescaleDBはクロックベースの連続データに特化した無償データベースとして活躍しています。TimescaleDBはPostgreSQL上に構築され、従来型データベースの機能と時系列データベースのスケーラビリティを両立させています。

次章では、この2つのデータベース構造の詳細を取り上げ、機能やパフォーマンス、活用シーンについて深く掘り下げます。監視用途での実運用例も紹介し、PrometheusとTimescaleDBのどちらが自身の時系列データに適しているか判断するための参考にしていただけます。

Prometheusとは何か

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Prometheusは、さまざまなシステムの監視とアラート機能を、オープンソースの形で安価に実現する優れたツールといえます。もともとはSoundCloudで開発され、現在では技術業界全体に広く普及しています。Cloud Native Computing Foundationの主要プロジェクトの一つとして、KubernetesEnvoyなどと並んで重要な位置を占めています。

Prometheusのアーキテクチャ

Prometheusはシステム監視における堅牢性を備えており、障害に強い構成を持つ点が大きな特徴です。一台一台のPrometheusインスタンスが独立して動作する「自己完結型」の設計で、分散ストレージやクラスタの構築に振り回される必要がありません。

Prometheusのデータモデルはシンプルでありながら柔軟性が高い構造です。複数のレイヤーに分割され、メトリクス名とキー・バリューのラベルの組み合わせで時系列データを識別します。これによってデータの分類や集計を正確に行えます。

Prometheusを支える主要コンポーネント

Prometheusの仕組みは複数のコンポーネントで構成されています。それぞれが重要な役割を担っています。

  1. Prometheusサーバー(中核): 時系列データを収集・保管するコアの部分です。
  2. クライアントライブラリ(連携部分): 任意のプログラミング言語で書かれたサービスとの接続を可能にします。
  3. Push Gateway(補助): 短期間で終了するジョブのメトリクスを受け取る仕組みを提供します。
  4. エクスポーター(翻訳担当): サードパーティのサービスやアプリのメトリクスをPrometheusに渡す橋渡し役です。
  5. Alertmanager(アラート管理): 発行されたアラートをグルーピングし、通知先へ転送する機能を担います。
  6. Web UIとAPI(データへの入り口): データの可視化やカスタムクエリを実行する際に利用します。

Prometheusのデータモデルとクエリ言語

Prometheusでは、すべてのデータが時系列として保存されます。つまり、同じメトリクスとラベルセットを持つ値の連続が「1つの時系列データ」です。

Prometheusのクエリ言語であるPromQLは高機能で、収集した時系列データを即時に抽出・集計できます。グラフ作成やアラート用の計算も柔軟に行えます。

Prometheusのメトリクス取得方法

Prometheusはプル型によるデータ取得が基本で、指定されたエンドポイントから直接メトリクスを読み取ります。一時的に動くジョブはプッシュゲートウェイを介して送信することも可能です。この仕組みにより、ターゲットが応答不能なタイミングも検知でき、より堅牢な監視を実現しています。

Prometheusのアラート運用

Prometheusではアラートの管理を2段階で行います。まずPrometheus本体にアラートルールを記述し、アラートが発生するとAlertmanagerへ送られます。Alertmanagerではアラートの抑制やグルーピングを行い、メールや通知ツールなどへ転送が可能です。

Prometheusのストレージ

Prometheusは独自のオンディスク型時系列データベースを内蔵し、必要に応じて外部ストレージとの連携もできます。内蔵ストレージは高い効率性を持ちながらスケールでき、カーディナリティの高い大量の時系列を扱う用途にも対応します。

総じて、Prometheusはオープンソースとしての柔軟性と、HTTPエンドポイントからメトリクスを取得できる強みを兼ね備えた監視システムです。データの加工やクエリ機能、独立稼働できるサーバー設計などが合わさり、システムやサービスを継続的に守る強力な存在になっています。

TimescaleDBの特長を探る

PostgreSQLを基盤とし、時系列データの管理と最適化を得意とするのがTimescaleDBです。ここでは他のデータベースと異なる優位点に着目してみましょう。

PostgreSQLとの高い互換性

TimescaleDBはPostgreSQLをベースに作られているため、PostgreSQLが持つ豊富な機能を時系列データに活用できます。拡張機能やツール、ライブラリとの連携がスムーズで、既存システムへの統合も容易です。

さらにPostgreSQL由来のデータの一貫性やトランザクション信頼性、データ整合性を活かし、クロックベースの連続情報を安全かつ細かく制御しながら扱えます。

優れたスケーラビリティとパフォーマンス

TimescaleDBは巨大な時系列データを捌くために考案され、「チャンク化」と呼ばれる手法でデータを小分けに管理します。これはタイムスタンプや条件に応じてテーブルを分割するアプローチで、大量のデータでも検索や集約がスムーズに行えるよう配慮されています。

また、自動的なデータライフサイクル管理(データ保持期間や階層化など)も備え、ニーズに合わせた柔軟な運用が可能です。

多用途かつ使いやすい操作性

TimescaleDBはSQLをフルサポートしており、SQLに馴染みがある方なら新たな言語を学ばずに使えます。このため、習得が容易で、チームへの導入もスムーズです。

数値型はもちろん、カテゴリー型やテキスト型など、幅広いデータ型を扱える点も魅力で、時系列データが多様な形式で存在するユースケースでも柔軟に対応できます。

高度な分析能力

TimescaleDBは高度な分析機能を備え、クロックベースの連続情報から有益なパターンを見いだすことに長けています。大規模なテーブル同士の結合や複雑なクエリにもしなやかに対応し、大規模データ分析のハードルを下げます。

さらに断続的な集約機能により、即時性を求められる分析用途でも活躍します。

コミュニティとサポートの充実

TimescaleDBには開発陣や利用者コミュニティが積極的に関わっており、技術的な疑問やトラブルへの対応が迅速です。利用者同士の情報交換も活発で、新しい機能や改善が継続的に取り込まれています。

こうしてTimescaleDBはPostgreSQLとの連携のしやすさ、高いスケーラビリティ、幅広い運用性や高度な分析力、活発なコミュニティをもつ点で秀でており、時系列データ管理に求められる多くのニーズを満たしています。

Prometheusの主な特色

データを時系列で扱うにあたり、Prometheusは非常に先進的な仕組みを備えています。ここではPrometheusの特徴をかいつまんで説明します。

1. 多次元的なデータモデル

Prometheusはメトリクス名に加え、キー・バリュー形式のラベルを組み合わせる多次元データモデルを用いています。この方法によって、柔軟かつ高速なクエリを実現し、ラベルを組み合わせた絞り込みや集約が容易に行えます。

2. 高度なクエリ言語

PrometheusにはPromQLという独自のクエリ言語があり、収集した時系列データを多角的に分析できます。フィルタリング、集約、演算などを直感的に記述でき、データを深く掘り下げることが可能です。

3. ネイティブなアラート管理

Prometheusには、柔軟かつ高度なアラート機構が組み込まれています。メトリクスに基づいて定義されたアラートを元に、通知の重複排除や振り分け先の指定なども簡単です。社内のメールやPagerDuty、OpsGenieなどとも連携でき、アラートのサイレンス機能も備えています。

4. 豊富なメトリクス取得方式

HTTPによるプル型が主ですが、一時的なジョブにはプッシュ方式も利用できます。これにより、信頼性と柔軟性を同時に確保しています。

5. 強力なサービス発見機能

KubernetesやConsul、DNS SRVレコードなどを使ったサービス発見機能を備え、変化の激しい環境でも監視対象を自動的に把握できます。

6. 高効率なデータ保管

Prometheusは時系列データの保存で効率性を高める設計があり、さらに外部ストレージ連携も可能です。保管期間に応じ、多量の生データを残すか古いものを削除するか選択できます。

7. 柔軟な可視化機能

標準のWeb UIでの表示だけでなく、Grafanaのような外部ツールと連携し、さらに洗練されたダッシュボード表示が可能です。

8. 多言語に対応したクライアントライブラリ

Go、Java、.NET、Ruby、Pythonなどさまざまな言語向けのライブラリを提供しており、アプリに計測コードを組み込みやすくなっています。

9. フェデレーションによる拡張性

Prometheusは階層的・水平的なフェデレーションをサポートし、大規模なモニタリング構成にも対応可能です。

10. 幅広いシステム互換性

クラスタ構成、アラート、永続化など多数のシステム連携に優れており、ITインフラ監視に幅広く活用できます。

問い合わせ言語やアラート管理など、多彩な機能を備えるPrometheusは、時系列データベース業界で存在感を高める強力な監視・分析ツールと言えます。

TimescaleDBの特徴に迫る

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TimescaleDBはPostgreSQLの基盤を活かしながら、時系列データの取り扱いに特化したデータベースです。ここで注目したいのは、TimescaleDBのみに備わる特有の機能です。

優れたパフォーマンスと拡張性

TimescaleDBは非常にスケーラブルな設計になっており、大量の時系列データを効率的に扱える仕組みが整っています。データの分割(チャンク分割)機能によって、巨大なデータを時間やその他の次元で細分化し、データが膨大になっても検索性能を落としにくくします。

また、高度なインデックスやクエリ最適化技術を駆使しているため、大量データの中から複雑な分析を行うようなケースでも高い応答速度を維持できます。

完全なSQL互換

TimescaleDBは従来のSQLを100%利用できるため、SQLに慣れ親しんだ方には扱いやすい環境です。アプリや既存のツールとの連携面でも、SQL対応によって導入ハードルが下がります。

高度なデータ圧縮技術

TimescaleDBはデータ圧縮を備えており、長期間の時系列データを効率よく保存できます。企業が大量の時系列データを扱う際、ストレージコストを抑える上でも便利です。

自動データ保持

TimescaleDBは自動的に古いデータを削除するポリシー設定が可能で、運用負荷を軽減できます。必要に応じて、保持方針をカスタマイズすることもできます。

信頼性とオープン性

PostgreSQLがもつ信頼性とオープン性を継承しているため、予期せぬ停止やデータ損失のリスクを抑え、安心して運用できます。

柔軟性

ユーザー独自の機能やデータ構造を取り入れやすく、拡張が容易です。こうしたカスタマイズ性に優れる点も、多様なユースケースへの対応を可能にしています。

こうした特徴から、TimescaleDBは大量の時系列データを扱う用途において、柔軟性とスケーラビリティを両立した優れた選択肢となります。次章ではPrometheusとTimescaleDBのデータモデルを比較し、それぞれがどのように時系列データを扱うかを深く見ていきましょう。

データモデルの比較: PrometheusとTimescaleDB

時系列データベースを使う上で、データの分類や保存方法、そして取得方法が重要なポイントになります。PrometheusとTimescaleDBでは、それぞれ異なるアプローチを取っているため、両者の強みと弱みを見比べてみましょう。

Prometheusのデータモデル

Prometheusは多層的な設計を採用し、メトリクス名とラベル(キー・バリュー形式)の組み合わせを使ってデータを柔軟に扱います。メトリクス名で大枠を捉え、ラベルで詳細を指定するイメージです。

例えば、以下はPrometheusでの時系列データの一例です:

 
net_req_cumulative{method_type="POST", gateway="/notifications"}

ここでは、net_req_cumulativeがメトリクス名で、method_type="POST"gateway="/notifications"が付加情報(ラベル)になります。ラベルの数が多いと、それだけユニークな組み合わせが増加し、Prometheusのパフォーマンスや規模に影響を与える可能性があります。

TimescaleDBのデータモデル

一方、PostgreSQL上に構築されたTimescaleDBは、従来のテーブル構造をベースとしつつ「ハイパーテーブル」という概念を取り入れ、時系列データを効率的に扱えるようにしています。

TimescaleDBでは、ハイパーテーブルは通常のテーブルを拡張したもので、実際には時間の区切りごとに分割されたバケツ(チャンク)にデータを保存します。

以下はTimescaleDBでの時系列データの例です:


DESIGN TABLE weather_info (
  moment       TIMESTAMP           NOT NULL,
  locale       STRING              NOT NULL,
  temp         DOUBLE              NULL,
  moistness    DOUBLE              NULL
);
SELECT develop_hypertable('weather_info', 'moment');

この例ではweather_infoというテーブルをハイパーテーブル化し、時刻情報をmoment列で管理しています。

高スケーラビリティを狙う場合、Prometheusはラベル数が多いデータだと負荷がかかる一方、TimescaleDBはテーブルを分割する仕組みにより大量のユニークデータにも比較的対応しやすいです。ただし、SQLベースの設計に慣れた方にとってTimescaleDBは扱いやすい利点もあります。

データモデルの比較表

項目 Prometheus TimescaleDB
構造 メトリクス名+ラベル テーブル構造+ハイパーテーブル
問い合わせ言語 独自言語(PromQL) SQL
高カーディナリティ 多すぎると処理が重くなる可能性 ハイパーテーブルで対応しやすい
柔軟さ ラベルによる柔軟性が高い SQLとテーブル設計を自由に使える

このように、Prometheusは多次元データモデルで柔軟かつ高度なクエリ処理を得意とし、TimescaleDBはSQLに基づく親しみやすい構造とスケーラビリティの高さを持っています。

Prometheusによる時系列データの扱い

Prometheusは、オープンソースの中でも特に監視やアラートに強みを持つシステムとして認知されています。時系列データを取り扱う際にもその耐障害性や扱いやすさが際立ちます。

多層的データ構成の強み

Prometheusの最大の特徴は、メトリクス名と複数ラベルを組み合わせる多層的構造にあります。これにより、例えば「本番環境」と「テスト環境」のように明確な区分をつけながら同じメトリクスを扱うことができます。

たとえばHTTPリクエストの遅延時間を示すメトリクスが下記のように定義されたとします:

 
http_request_duration_seconds{ method="GET", handler="/api/tracks" }

この例だとhttp_request_duration_secondsがメトリクス名であり、methodhandlerがラベルになります。

プルモデルでのメトリクス収集

Prometheusは多くの監視ツールが採用するプッシュ方式ではなく、プル方式を基本としています。これにより、アプリ側でキューやバッファを用意する必要がなく、データ欠損リスクが抑えられます。

ターゲットが停止した場合などはメトリクスが取得できず、Prometheusは時系列が途切れたことを把握できます。この点がプッシュモデルに対する大きな優位性です。

自己完結型データストレージの意義

Prometheusは外部分散ストレージに依存しない独自のデータストアを備えており、可用性とシンプルさを両立しています。オンディスク形式で保存されるデータは軽量化を意識した構造で、同時に起動中のインスタンスのみで完結する設計が特徴です。

この単一ノード主体のアーキテクチャは、クラスタ構成を組まずに安定動作が得られる反面、膨大なデータ量を扱う場合には限界がある可能性があります。

PromQLの多彩な表現力

Prometheusが提供するPromQLは、時系列データ特有の複雑なパターンを捉えるための強力な言語です。以下のようないろいろなクエリが書けます:

  • 特定の時点だけを対象にするベクトルセレクター
  • 時間範囲を指定するレンジセレクター
  • スカラー関数や演算
  • 集約関数の多段利用

例えば、下記のPromQLクエリは、過去1時間におけるHTTPリクエスト遅延時間の95パーセンタイルを求める例です:

 
histogram_quantile(0.95, sum(rate(http_request_duration_seconds_bucket[1h])) by (le))

このようにPrometheusはメトリクス収集から保存、クエリまでを一貫して担い、多層的な時系列データにも強い耐久性とシンプルさを提供しています。

TimescaleDBによる時系列データの扱い

TimescaleDBは、従来のRDBMSであるPostgreSQLを拡張し、時系列データ特有のニーズに幅広く応える設計をしています。ここでは、TimescaleDBがどのようにして大量のクロックベース情報を管理するかを概観します。

TimescaleDBの画期的な設計

TimescaleDBは、リレーショナルモデルに基づく柔軟性と、非リレーショナルなアプローチが得意とする大規模データ処理のいいとこ取りをした設計になっています。PostgreSQLによる複雑なクエリやACIDトランザクションを活かしつつ、独自のハイパーテーブル機能でデータを時系列と空間次元に分割管理します。

ハイパーテーブルという仕組みは、システム全体では複数のチャンクに分割されたデータを保持していても、SQLレベルでは一つのテーブルのように扱える点が大きなメリットです。

多様なデータにも対応可能

高いカーディナリティを持つデータ、たとえばユーザーIDやIPアドレスなど膨大な種類の要素を含むデータでも、「チャンク化」による柔軟なパーティショニングで対応しやすいです。一般的な時系列データベースが苦手とする多様な要素も、TimescaleDBなら比較的扱いやすくなっています。

SQLによる時系列データ操作

TimescaleDBはPostgreSQLのSQLを活用するため、既存の知識があればストレートに活かせます。JOINやサブクエリ、ウィンドウ関数など多様な機能をフルに利用できます。

さらに、time_bucket()のように時系列操作に便利な関数が用意されており、特定の時間ごとにグルーピングして集約するといった処理が容易です。


SELECT time_bucket('5 minutes', time) AS five_min, avg(value)
FROM metrics
GROUP BY five_min
ORDER BY five_min;

この例のように、time_bucket()で5分単位に区切って平均値を算出することも簡単です。

ライフサイクル管理と圧縮

データの肥大化を抑えるために、TimescaleDBでは自動ライフサイクル管理機能が活かせます。指定条件に応じて古いデータを削除するポリシーを設定したり、データ圧縮機能を使って物理的なストレージを節約することもできます。

こうした仕組みにより、複雑なクエリや高カーディナリティの時系列データ分析であっても、SQLベースで拡張性の高い操作が実現します。

クエリ言語比較: PromQL vs SQL

時系列データベースを選ぶ際、クエリ言語は操作性やパフォーマンスに直結します。PrometheusはPromQL、TimescaleDBはSQLを利用しますが、それぞれ特徴や強みが異なります。

PromQL: Prometheusで使われるクエリ言語

PromQL(Prometheus Query Language)はPrometheus向けに特化された関数型のクエリ言語です。時系列データを即時に選択・集計できるよう設計されており、瞬間値を扱うインスタントベクトルと時間範囲を扱うレンジベクトルの2種類がキー概念です。

SQLに慣れた方にはやや独特に映るかもしれませんが、一度学べばラベルに基づいてデータを自在に操作できる強力な手段となります。例えば:

 
http_requests_total{method="GET"}[5m]

この例は直近5分間のHTTP GETリクエスト数を取得するPromQLクエリです。

SQL: TimescaleDBのクエリ言語

TimescaleDBはPostgreSQLを拡張しているため、標準的なSQLをそのまま使えます。長く広く使われてきたSQLは多くの開発者にとって親しみやすく、JOINや集計、サブクエリなど多彩な機能が利用できます。

以下は同様の内容をTimescaleDBで取得するクエリ例です:

 
SELECT count(*) 
FROM http_requests 
WHERE method = 'GET' 
AND time > NOW() - interval '5 minutes';

WHERE句で条件を指定し、5分以内のGETリクエストをカウントしています。PromQLとは構文がまったく異なりますが、SQLに慣れている方にはこちらのほうが理解しやすい場合も多いです。

PromQLとSQLの比較

両者の主要な相違点を列挙すると:

  1. 学習コスト: SQLは一般的に広く使われており、学習コストが低い。一方PromQLは独自仕様のため新たに習得が必要。
  2. データ操作: どちらも強力な集計が可能だが、PromQLは時系列データに最適化された集約が簡単に書ける。SQLは汎用性が高い。
  3. 時間ベースの集約: PromQLは時間範囲の集約に特化している。SQLでも可能だが、追加関数が必要な場合もある。
  4. ラベルフィルタリング: PromQLではラベルを活用したフィルタリングがしやすい。SQLは従来のWHERE句で対処。
  5. サブクエリ: SQLはサブクエリを多用できるが、PromQLは制限付きで利用可能。

使いやすさは用途や慣れによって異なりますが、リアルタイムなメトリクス分析を行いたいならPrometheusのPromQL、汎用的なデータ操作や既存のSQL資産を活かしたいならTimescaleDBのSQLという具合に選ぶとよいでしょう。

ストレージ構造の違い: Prometheus vs TimescaleDB

時系列データの世界では、パフォーマンスや拡張性に深く関わってくるのがストレージ設計です。ここではPrometheusとTimescaleDBのストレージ構造を比較し、それぞれの利点と留意点に注目します。

Prometheusのストレージ: シンプルさと高速化

Prometheusは時系列データを即時に扱うため、独自フォーマットのオンディスクストレージを採用しています。RAMとディスクに効率よく分配し、高速かつスナップショット的にデータを取得できるよう最適化された仕組みが特徴です。

内部的には、2時間単位のブロック(Block)に区切り、それぞれのブロックにはサンプルをセグメントごとに格納します。さらに、書き込み中のデータを記録するWAL(Write-Ahead Log)によって、メモリ上のサンプルを保護します。

 
Block (2時間分)
|
|--- セクション(特定の時系列用)
|    |
|    |--- サンプル(タイムスタンプと値)
|
|--- Write-Ahead-Log (WAL)
     |
     |--- メモリ上のシリーズとサンプル

コンパクト化にも配慮されており、ストレージの負荷を必要最低限に抑えながらスピードを重視する仕組みです。一方で、長期保管や大規模データの分散ストレージにはあまり向きません。

TimescaleDBのストレージ: PostgreSQLベースの拡張

TimescaleDBはPostgreSQLを拡張しているため、PostgreSQLの優れたストレージ機能をそのまま利用できます。特徴的なのは「ハイパーテーブル」と呼ばれる論理テーブルを、実際にはチャンク(小さなテーブル)に分割して保持する点です。

タイムレンジごとにまとまったチャンクを複数のノードへ分散することで、大量のデータも効率よく取り扱えます。PostgreSQL標準のトランザクションログも利用できるため、データの整合性や永続性がしっかり保証されるのも強みです。

 
ハイパーテーブル
|
|--- チャンク(特定の時間帯)
|    |
|    |--- データ(タイムスタンプと値)
|
|--- トランザクションログ
     |
     |--- DB変更履歴

総括: 2つのストレージ戦略

Prometheusは簡潔なストレージで素早い処理を重視し、監視などリアルタイム性が強い場面で力を発揮します。一方、TimescaleDBはハイパーテーブル+チャンクによってスケーラブルな構成を実現しており、大量のデータ分析に向きます。

以下にポイントをまとめます:

主な特徴 Prometheus TimescaleDB
ベース 専用時系列DB PostgreSQL
データ構造 ブロック&セクション ハイパーテーブル&チャンク
永続化 WAL トランザクションログ
データ圧縮 高め PostgreSQL設定に依存
柔軟性 中程度 フルSQLが利用可能

リアルタイム監視重視ならPrometheus、大量データや集中的な分析が中心ならTimescaleDBといった使い分けが見えてきます。

スケーラビリティの比較:Prometheus 対 TimescaleDB

時系列データベースを選定する際、大量データに対応可能かどうかは重要な観点です。ここではPrometheusとTimescaleDBのスケーラビリティに関して、それぞれの特性を見ていきます。

Prometheusのスケーラビリティ

Prometheusはプル型の取得方式のため、多数のターゲットからメトリクスを集める際に負荷が増加しやすい傾向があります。基本的に単一ノードでの垂直スケーリングを想定しているため、CPUやメモリの追加で対応しきれない程の大規模データには苦労することがあります。

Prometheusは水平方向の拡張性をもともと備えていませんが、「フェデレーション」と呼ばれる機能により複数のPrometheus間でデータを階層的にまとめる方法はあります。ただし構成が複雑になり、管理コストがかさむ傾向があります。

TimescaleDBのスケーラビリティ

TimescaleDBはPostgreSQL由来の拡張性を持ち、単一ノードでの垂直スケーリングはもちろん、マルチノードでの水平スケーリングにも対応しやすい設計です。

データを「チャンク」に分割し、複数サーバーに分散可能な構造を取るため、データが膨大でもしっかり処理できます。さらにレプリケーションや高可用性にも対応しているので、大量データを扱う場面での安定感が大きいです。

スケーラビリティ比較

項目 Prometheus TimescaleDB
垂直スケール 可能 可能
水平スケール フェデレーションのみ ネイティブ対応
高可用性 標準では非対応 対応
レプリケーション 標準では非対応 対応

まとめ

大規模なデータを扱う場合、TimescaleDBがよりマッチする傾向にあります。Prometheusはフェデレーションによる水平拡張こそ可能ですが、構築が煩雑で本来の設計思想とはやや離れます。一方、TimescaleDBは額面通りに大容量データや高可用性が求められるシチュエーションに強いです。

Prometheusを使った監視の実例

時系列データベースとしてPrometheusを導入すると、どのように監視が進むのでしょうか。ここではPrometheusでの監視プロセスを簡単に示します。

Prometheusの導入

まずPrometheusをインストールし、設定ファイル(prometheus.yml)を書き替えて監視対象のエンドポイントを登録します。例えば:


global:
  scrape_interval:     15s 
  evaluation_interval: 15s 

scrape_configs:
  - job_name: 'prometheus'
    static_configs:
      - targets: ['localhost:9090']

この設定でPrometheusは15秒ごとにlocalhost:9090にアクセスし、メトリクスを取得します。

メトリクスの可視化

Prometheusはプル型でターゲットからデータを収集します。カウンター、ゲージ、ヒストグラム、サマリーなど、多種多様なメトリクスタイプを扱えます。

例えばカウンター型を利用してHTTPリクエスト回数を記録する場合は下記のように実装できます:

 
from prometheus_client import Counter

c = Counter('my_requests', 'HTTP Failures', ['method', 'endpoint'])
c.labels('get', '/').inc()

こうすることで、GETリクエストが発生するたびにカウンターがインクリメントされます。

Grafanaとの連携

Prometheus単体でもデータの簡易な可視化はできますが、より高度なダッシュボードを求める場合はGrafanaを利用するのが一般的です。Grafanaなしでも動きますが、視覚的な管理や分析にはGrafanaのパネルが便利です。

GrafanaでPrometheusをデータソースとして設定すれば、複雑なクエリもGUIを通して行いやすく、柔軟にダッシュボードを配置できます。例えば過去5分間のHTTPリクエストレートをGrafanaで可視化したい場合、クエリ欄には以下のように書きます:


rate(my_requests_total[5m])

平均秒間リクエスト数をリアルタイムで監視でき、ユーザーへの可視化が飛躍的にわかりやすくなります。

このように、Prometheusを用いた監視は、環境のセットアップ、メトリクス収集、データ表示の3ステップで進み、時系列データにおいて迅速かつ有益な情報を得られます。

TimescaleDBでの監視活用例

時系列データベースとしてTimescaleDBを導入し、監視用途に活かす実例を示します。TimescaleDBの特性をいかに運用で生かしているかを見ていきます。

ケーススタディの概要

仮にGenX Tech社という企業が、大規模なネットワーク機器を監視する必要があるとします。同社のネットワークにはサーバーやルーター、スイッチなど多数の機器が存在し、すべての状態を継続的に見守る仕組みを要求していました。

導入手順

GenX Tech社はTimescaleDBを採用し、まずPostgreSQL環境にTimescaleDBをインストールしました。次にSNMP(Simple Network Management Protocol)を用いて各機器のデータをTimescaleDBへ収集するよう構成し、CPU利用率やメモリ使用量、ネットワークトラフィック、稼働期間などの指標を時系列で蓄積していきました。

全てのメトリクスは、タイムスタンプ情報と紐づけられ、TimescaleDBに保存されます。

監視ダッシュボード

蓄積されたデータを可視化するため、同社はGrafanaを利用しました。GrafanaはTimescaleDBとも手軽に連携でき、任意のメトリクスを自由に取り出してダッシュボードに表示できます。多拠点に分散する機器ごとの状態をリアルタイムに確認できるよう設定し、ネットワーク障害を迅速に把握できるようになりました。

成果

こうしてTimescaleDBによる監視システムは、大量デバイスからのデータを安定して取り込み、リアルタイムで見やすい形にまとめることに成功しました。大規模ネットワーク環境でもパフォーマンスが落ちることなく、障害の事前検知も向上し、ダウンタイム削減と効率的な保守管理に貢献しました。

実際のコード例

TimescaleDBへのINSERT例:

 
INSERT INTO appliance_metrics(time, device_id, cpu_usage, memory_consumption, network_traffic)
VALUES (NOW(), 'deviceA1', 80, 4096, 2000000);

データ取得例:

 
SELECT time, AVG(cpu_usage), AVG(memory_consumption), AVG(network_traffic)
FROM appliance_metrics
WHERE time > NOW() - INTERVAL '1 hour'
GROUP BY time_bucket('5 minutes', time);

このようにTimescaleDBは、大規模環境でもデータ収集から可視化までをスムーズに行えるため、監視やアナリティクスに最適な選択肢といえます。

PrometheusとTimescaleDBのパフォーマンス比較

時系列データベース選択においては、単に機能面だけでなくパフォーマンス面も重要です。ここではPrometheusとTimescaleDBの比較にあたり、主要な視点を解説します。

評価ポイント

時系列データベースのパフォーマンスを語る上で、主に以下の観点が挙げられます。

  1. クエリ応答速度
  2. データ取り込み速度
  3. データ圧縮
  4. 拡張性

クエリ応答速度

Prometheusは多次元ラベルを活かした素早いクエリが得意ですが、ラベルが増えすぎたりクエリが複雑になりすぎたりすると負荷が高まります。

TimescaleDBはSQLをフル活用し、複雑なJOINやサブクエリもこなせますが、クエリ内容によっては速度が変動する可能性があります。

データ取り込み速度

Prometheusはブロック単位でデータを扱う仕組みの都合上、ある程度の取り込みスピードを持ちますが、リアルタイム可視化に特化しているため、膨大な一括取り込みは苦手とされるケースもあります。

TimescaleDBはチャンク化による効率的な書き込みが可能で、大量の挿入操作を迅速に処理できます。

データ圧縮

Prometheusには標準で強力なデータ圧縮がありません。長期保存ではデータ量が膨大になる恐れがあります。

TimescaleDBはデータ圧縮機能が備わっており、必要に応じてストレージ使用を大幅に削減できます。

拡張性

Prometheusは主に単一ノードで動き、高負荷になるとフェデレーションで対処します。一方TimescaleDBは水平スケールが比較的容易で、大量データを持つケースにも強いです。

総合比較

項目 Prometheus TimescaleDB
クエリ速度 シンプルなクエリは高速 SQL次第で速度変動
データ取り込み やや遅延の可能性 チャンク化で高速
データ圧縮 非対応 対応(最大90%圧縮)
拡張性 限定的(フェデレーション) 優秀(水平・垂直に拡張可)

つまり、リアルタイム監視と簡易クエリを優先したいならPrometheus、大量データの取り込みや高度な分析・圧縮機能を求めるならTimescaleDBが有利と言えます。

データ保持方針: PrometheusとTimescaleDB

データをどの程度まで長く保持するかは、時系列データベースにとって重要な運用上の課題です。PrometheusとTimescaleDBはそれぞれ異なるアプローチを取ります。

Prometheusのデータ保持

Prometheusではデータ保持が有効期間を基準に制御され、デフォルトで15日間分のデータを保存します。起動オプション--storage.tsdb.retention.timeを使い、保持期間を変更できます:

 
./prometheus --config.file=prometheus.yml --storage.tsdb.retention.time=30d

この例では30日間保存に延長していますが、それ以上の期間を選ぶ場合はストレージ圧迫のリスクがあります。また、データを選別して保持する機能はありません。

TimescaleDBのデータ保持

TimescaleDBではハイパーテーブル単位で細かい保持設定ができます。加えて自動データ削除ポリシーを設定できるため、用途に合わせて柔軟性の高いライフサイクル管理が行えます。

例:

 
SELECT add_retention_policy('conditions', INTERVAL '7 days');

このコマンドでconditionsテーブルに7日間の自動保持ルールを設定し、古いデータを削除できます。さらにTimescaleDBの圧縮機能を組み合わせると、大量データの保存負荷が大きく低減されます。

保持戦略の比較

項目 Prometheus TimescaleDB
デフォルトの保持期間 15日 未設定
カスタム保持 可能 可能
選択的な保持 不可 テーブル単位で可
データ圧縮 なし あり

Prometheusは期間指定でのシンプルな保持方式ですが、TimescaleDBはテーブル単位の運用や圧縮によって、よりきめ細かな運用が可能です。

サポートとコミュニティ: Prometheus vs TimescaleDB

オープンソースの時系列データベースは、コミュニティの存在が大きな支えになります。両者のユーザーコミュニティやサポート体制、利点・懸念点を見ていきます。

コミュニティ活動

PrometheusはCloud Native Computing Foundation(CNCF)のプロジェクトとして多くのユーザーに支持されており、GitHubでのスター数は3万を超え、フォークも4千以上あります。ユーザーが豊富で、オンライン資料やツール、ドキュメントも豊かです。

TimescaleDBはPrometheusに比べると若いコミュニティですが、それでもGitHubスター数は1万以上、フォーク数も500を超え、着実に拡大中です。ブログやチュートリアル、実例が頻繁に更新され、開発コミュニティも活発に活動しています。

データベース GitHubスター GitHubフォーク
Prometheus 30,000超 4,000超
TimescaleDB 10,000超 500超

サポートルート

PrometheusはメールリストやIRC、専用のSlackなど複数のチャンネルで質問ができます。世界各地のユーザーミートアップも盛んで、支援体制が厚いです。

TimescaleDBはSlackやGitHub Issue、Stack Overflowによるコミュニティサポートが主ですが、エンタープライズ向けには専用サポートも提供しています。定期的にオンラインイベントやミートアップが開催され、参加者同士の連携も期待できます。

学習リソース

Prometheusは基本的なドキュメントに加え、ブログやビデオチュートリアルなどが充実し、学習ハードルを下げています。

TimescaleDBも公式ドキュメントやブログが豊富で、初心者向けから高度なチューニング情報まで網羅されています。

企業向けサポート

Prometheusは多様な企業が専門サポートを提供しており、コンサルや研修サービスも利用できます。

TimescaleDBには有料版TimescaleDB Enterpriseがあり、データライフサイクル管理や優先サポート、セキュリティ機能などが追加されています。

総合すると、Prometheusは広大なコミュニティとCNCF支援が強み、TimescaleDBは勢いのあるコミュニティとエンタープライズ版による包括的サポート体制が魅力です。

PrometheusかTimescaleDBか、選択する際のポイント

PrometheusとTimescaleDBのどちらを使うかは、業務要件やデータの種類、必要となるクエリの複雑さなどを考慮する必要があります。以下では、選ぶ際に検討すべき要素を整理します。

要件を明確にする

まずはデータの性質や規模、そしてどのような分析や監視を行いたいかを整理します。

Prometheusは、監視のためのメトリクス取得やアラート通知に長けています。対してTimescaleDBは時系列データを多角的に分析したり、多量の書き込みや長期保管が必要なシナリオに強みを発揮します。

システム性能を評価する

Prometheusは単一ノード中心の構成で、メモリやディスクに比較的制約があるため、データ量が爆発的に増えそうな場合は注意が必要です。

TimescaleDBはPostgreSQLベースのため、大量データ管理やスケールアウトに対応しやすい一方、処理速度がPrometheusのように軽快とは限りません。

スケーラビリティの要否

データが急増する可能性があるなら、スケースする仕組みは非常に重要です。Prometheusはフェデレーションにより拡張できますが複雑です。TimescaleDBはノード追加で対応しやすく、大規模データでも柔軟に拡張できます。

操作性

Prometheusは独自クエリ言語PromQL、TimescaleDBはSQLです。SQLに慣れたチームならTimescaleDBは取り入れやすいでしょう。一方、PromQLはメトリクス解析に特化しており、慣れれば強力です。

コミュニティやサポート体制

CNCF支援を受けるPrometheusは情報量が多いため、困ったときに助けが得られやすいです。TimescaleDBもコミュニティが伸びており、エンタープライズ利用なら公式サポートも検討可能です。

総じて、リアルタイム監視とアラートを重視するならPrometheus、大量データや長期的な深い分析が中心ならTimescaleDBが有力候補になるでしょう。

PrometheusとTimescaleDBの長所・短所

時系列データを扱う場合、よく名前が挙がるのがPrometheusとTimescaleDBです。両者にはそれぞれ強みと課題があります。以下にまとめます。

Prometheusのメリット

  1. シンプルでわかりやすい構成
  2. PromQLによる多様なデータ解析
  3. 標準でアラート機能内蔵
  4. 多次元のデータモデル
  5. 時系列データの監視に最適化

Prometheusのデメリット

  1. 水平スケーラビリティが低い
  2. レプリケーション機能が標準装備されていない
  3. 長期保管への対応に難がある

TimescaleDBのメリット

  1. 高いスケーラビリティ(水平・垂直両対応)
  2. SQLとの高い親和性
  3. 長期間データの保持が可能
  4. PostgreSQLベースによる信頼性

TimescaleDBのデメリット

  1. 初期設定がやや複雑
  2. リアルタイム性ではPrometheusに劣る場合がある
  3. 標準でアラート機能は搭載されていない

要約すると、運用の手軽さと即時性重視ならPrometheus、長期的なデータ保管と徹底分析が欲しいならTimescaleDB、という使い分けが見えてきます。

PrometheusとTimescaleDB、ビジネス上はどちらが適している?

時系列データベースとしてはPrometheusとTimescaleDBが有力ですが、ビジネス現場でどちらを採択すべきかは、当然ながら企業の事情によります。ここでは判断材料となるポイントを整理しましょう。

要件の洗い出し

会社が求めるのは即時性を重視した監視システムか、大量データへの対応力かなど、まずは要件定義が重要です。

Prometheusはリアルタイムのアラートや監視機能が秀でており、インフラやシステムの動作を逐次的に把握したい企業に適します。

TimescaleDBは複雑なクエリや高ボリュームのデータ処理が得意で、分析基盤や巨大なログを長期保存するケースに向いています。

Prometheus: 監視とアラートのプロ

Prometheusはメトリクスの即時収集とアラート発行に特化しているため、障害対応やリアルタイム監視が欠かせない環境で力を発揮します。プル型モデルやアラートマネージャーにより、迅速に問題を発見できます。

一方で、高度な分析や膨大データの蓄積には不向きで、基本設計が大容量データ向きではありません。

TimescaleDB: 複雑なクエリと拡張性

TimescaleDBはハイパーテーブルによる柔軟な拡張とSQLが持つ豊富な機能によって、複雑な分析やビッグデータ対応にもスムーズです。データを長期的に保持するケースでも運用しやすい設計です。

ただし、標準ではアラート機能を備えていないため、別途設定が必要です。

最適な選択

アラート主導のリアルタイム監視が優先か、それとも深い分析と大量データ管理が優先か。そこを明確にすれば、PrometheusかTimescaleDBか自ずと道がわかるでしょう。

時系列データベースに「絶対的な正解」は存在せず、自社に最適化されたシステムを選ぶことが成否を大きく左右します。

結論:PrometheusとTimescaleDB、どちらを選ぶべきか

時系列データ管理の文脈で頭角を現すPrometheusとTimescaleDB。両者は性質が異なり、それぞれが得意とする領域があります。

特徴の違い

Prometheusはプル型モデルを基盤に設計され、主に運用監視のために開発された経緯があります。リアルタイム性に強く、システム内で何が起きているかを瞬時に把握し、問題点を即座にアラートで浮き彫りにできます。独自のPromQLを用いて多次元的にメトリクスを分析する点も魅力です。

一方のTimescaleDBはPostgreSQLを拡張したSQLベースの時系列データベース。既存のPostgreSQLツールとの親和性が高く、大規模データの長期保管や高度な分析に適しています。マルチノード構成による拡張性も強みです。

パフォーマンス面の整理

Prometheusはコンパクトな時系列データモデルと効率的なオンディスク形式により、リアルタイムモニタリングにおいては非常に素早いレスポンスを示します。しかし、単一ノード配備が基本のため、大規模データの永続化には限界があります。

TimescaleDBはマルチノード拡張により多量のデータを扱いやすく、保持期間が長いケースでも柔軟に対応可能です。自動パーティショニングによってパフォーマンスも維持しやすいです。

データ保持とスケール

長期的なデータ保持やスケールアウトの必要がある場合は、TimescaleDBが有利です。Prometheusでは長期保存には追加対策が必要で、スケールアウトも複雑です。

TimescaleDBはノードを増やせば性能と容量を両立でき、テーブル単位で保持期限を変えることもできます。

コミュニティについて

PrometheusはCNCFの後ろ盾があり、ユーザー基盤が広いです。一方、TimescaleDBも急速にユーザーが拡大しており、開発活況が続いています。

最終的な結論

Prometheusはリアルタイム監視や即応アラートが必要な環境で光り、TimescaleDBは大きな時系列データを蓄積・分析したい状況で威力を発揮します。

両者を併用する事例も多く、リアルタイムモニタリングはPrometheus、深い分析や履歴データ管理はTimescaleDBというように使い分けるのも一般的です。重要なのはビジネス要件とデータ規模に合わせ、最適な形で組み合わせることといえるでしょう。

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