サイバー攻撃やデータ流出が頻発する時代において、強固なパスワードポリシーだけでデジタル資産を守るのは危険です。クラウドやデジタルデバイスに保存されるデータを確実に保管するには、二重あるいは複数の対策が必要です。
デジタル基盤やITネットワークの安全性を語るとき、二要素認証と多要素認証という2つの手法がすぐに思い浮かびます。他のITセキュリティ対策と組み合わせることで、これらの認証手段は機密データを不正なアクセスから守ります。
これらは同じものなのでしょうか?二要素認証と多要素認証、どちらが優れているのか。本記事をお読み頂くことで、疑問点が解消されることを願っています。
基本的には、利用者がデータ、デジタル資産、アプリ等にアクセスしようとする際に、その身分や権限を確認する手順のことです。認証は、利用者が示す信頼性や正当性の主張を検証するものです。
リモートワークの普及により、データやデバイスへのアクセス経路が増えた現在、誰にでも無条件でアクセスを許可するのは賢明ではありません。データの損失や資産の誤用を防ぐため、利用者の資格情報と本人確認を確実に行う必要があります。
情報の照合作業には、主に3つの要素が用いられます。これらは2FAとMFAの違いを理解する際にも役立ちます。以下の通りです:
本人確認の過程では、利用者が対象のデータやデバイスに関してどのような情報を持っているかを確認します。たとえば、ノートパソコンの電源を入れる際、その所有者や利用許可を受けた者であれば、管理者が設定したパスワードを知っている必要があります。また、ログイン情報を忘れた場合の安全策として、セキュリティ質問の答えが求められることもあります。
認証された利用者には、特定のデータベースやデバイスへアクセスするための物理的またはデジタルな資産が提供されます。物理的な場合は、セキュリティキー、トークン、スマートカード、ロックなどが用いられます。
利用者が本来持つ固有の特徴を確認することは、認証において有効です。これには、網膜スキャンや指紋などの生体情報が含まれ、個々人固有のため、主にこれらで本人確認が行われます。場合によっては、各人の行動パターンが利用されることもあります。
基本を理解頂いたところで、MFAと2FAについても紹介します。
多要素認証は、デジタル資産が不正な手に渡らないよう、2つ以上の認証手段を組み合わせます。ログイン情報に加え、生体情報、PIN、スマートカードなどの重要な情報を提供した上で、対象のデバイスやデータへの完全なアクセスが許されます。通常、重要度の高いデータやデバイスで利用されます。
二要素認証は、利用者の信頼性を簡潔に2段階で確認します。ログイン情報ともう1つの認証手段を組み合わせ、OTP、SMS、セキュリティ質問、メール認証、ソーシャルプロファイルのログインなどが用いられます。
2FAとMFAのどちらが安全かという問いは、最も挑戦的な内容かもしれません。ITセキュリティの専門家は、安全性の観点からどちらが優れているかを議論しています。確かに、多要素認証は2つ以上の認証手段が使用できるため一見安全に思えますが、実際はその要素の質によります。
多要素認証は、信頼性の高い要素が用いられて初めて安全と言えます。たとえば、ログイン情報、セキュリティ質問、PINを組み合わせた場合、ログイン情報と生体情報を用いる二要素認証ほどの強度は得られません。
そのため、二要素認証や多要素認証を安全に機能させるには、認証手段を賢く選択する必要があります。セキュリティ層を増やしすぎると、かえって混乱を招く恐れがあります。一般には、2層のセキュリティは管理が容易です。どちらがより強固かの予測は、これらの運用方法に依存します。
多要素認証と2FAは多くの共通点があるものの、同一ではありません。ここで、主な違いを見ていきます。
二要素認証は、利用者の信頼性確認に複数の方法を用います。すなわち、1つの認証手段のみを使うわけではありません。多要素認証とは、1つ以上の認証手段の利用を指し、そのため二要素認証は多要素認証に含まれますが、すべての多要素認証が二要素認証であるとは限りません。
二要素認証においては、2番目の認証手段は通常、ログイン情報に依存し、利便性が重視されます。たとえば、ログイン後にセキュリティ質問が表示される場合、これはログイン情報と関連していることが多いです。しかし、多要素認証では、各認証手段が互いに独立している必要があります。例えば、生体情報はログイン情報とは直接関係がなく、セキュリティトークンやスマートカードも同様です。
複雑さという観点では、二要素認証は容易です。利用者は、対象のデバイスや資産、データにアクセスするために2つの情報のみを提供すればよく、管理者側も扱いやすいです。一方、多要素認証は管理者と利用者双方にとって手間がかかります。管理者は利用者ごとに様々な情報を集め、多要素認証のプロファイルを作成しなければならず、利用者はアクセス前に複数の情報を入力する必要があります。
また、人的ミスは二要素認証の方が少なく済む傾向があります。覚えるべき情報が2つで済むためです。しかし、多要素認証では、セキュリティ質問の答え、PIN、トークンなど、複数の情報を管理する必要があるため、混乱してしまうこともあります。
二要素認証または多要素認証を採用することで、単一の認証よりもセキュリティは向上します。双方とも、賢く運用すればデータやデジタル資産を守るのに有効です。ぜひ、さらに学び、確実な実施方法を検討頂き、活用の幅を広げて頂ければと思います。本ブログが2FAとMFAの理解に役立ったなら幸いです。
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