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tRPC vs REST

ウェブサービスの領域では、tRPCとRESTという2つのプロトコルがクライアントとサーバー間の通信で大きな存在感を示しています。それぞれが同じ目的を担いながらも、異なる思想のもとで動作し、独自の利点を提供しています。

tRPC vs REST

Webサービスの世界を解き明かす:tRPCとRESTの概要

本章では、これら2つのプロトコルを紹介し、それぞれの機能を説明しながら、包括的に比較するための土台を整えます。

tRPC:新たな存在

tRPCとは「typed Remote Procedure Call」を意味する比較的新しいフレームワークです。エンドツーエンドで型安全なAPIを提供するオープンソースソフトウェアであり、手動でHTTPを解析しているような煩雑さを減らし、あたかもコード内の関数を呼び出すかのような操作性を目指しています。


import { createRouter, tRPCClient } from '@trpc/client';

const client = tRPCClient({
  url: 'https://api.example.com',
});

const result = await client.query('getUser', { id: 1 });
console.log(result.name); // TypeScriptから文字列として扱われる

上記のコード例では、tRPCを活用して遠隔の関数をローカルの関数のように呼び出せるだけでなく、TypeScriptによって型の整合性も保たれます。これは従来のHTTPベースのAPIと異なり、手動のパースが不要であり、かつ型安全性を備えている点が大きな特徴です。

REST:既存の標準

REST(Representational State Transfer)は、ウェブサービスを構築する際に用いられるソフトウェアアーキテクチャスタイルです。シンプルさと、既存の広く採用されているプロトコルの上に成り立つことから、ネットワークアプリ開発のスタンダードとして活用されています。


fetch('https://api.example.com/users/1')
  .then(response => response.json())
  .then(data => console.log(data.name));

上記のRESTの例では、特定のURLに対してGETリクエストを送り、ユーザー情報を取得しています。レスポンスはJSON形式に変換され、コンソールに出力されます。これはURLごとに異なるリソースを表すという、より伝統的なAPIデザインを示しています。

tRPC vs REST:冒頭の比較

Feature tRPC REST
Type Safety Yes No
HTTP Method Usage Not Required Required
API Design Function-based Resource-based
Learning Curve Moderate Low

この比較を見る限り、RESTはシンプルで扱いやすい一方、tRPCは型安全性や関数ベースのAPIといった高度な機能を提供します。ただしHTTPメソッドから離れているため、tRPCを習熟するにはやや学習コストがかかるのも事実です。

まとめると、tRPCとRESTはいずれも独自の長所と短所があります。どちらを選ぶべきかは、プロジェクトの要件によって大きく左右されます。次章以降では、両プロトコルの仕組みや利点・欠点、具体的な使用例などをさらに掘り下げ、より包括的な比較を行います。

コードを読み解く:tRPCの進化と仕組み

ウェブサービスの世界は常に進化しており、システム間のスムーズな通信を実現するためにさまざまなプロトコルや技術が登場してきました。近年、注目を集めているのがtRPCです。

tRPCとは、typed Remote Procedure Callの略で、開発者が型安全でエンドツーエンドの型情報を扱えるAPIレイヤーを構築できるようにする比較的新しいフレームワークです。従来のRPCフレームワークの制約を補うべく設計され、より効率的かつ信頼性の高いウェブサービスの構築を目指しています。

tRPCの進化

RPC(Remote Procedure Call)の発想自体は古くから存在しており、1980年代からさまざまな形でシステム間通信を実装してきました。しかし、従来のRPCフレームワークは型安全性を欠き、クライアントとサーバーの結合度が低かったことから、エラーが起きやすいという問題がありました。

そこでtRPCが登場し、フルに型情報を扱えるフレームワークを提供することで、エラー発生のリスクを減らし、開発工程をスムーズにすることを可能にしています。

tRPCの仕組み

tRPCは「プロシージャ(手続き)」という、リモートで呼び出す関数を定義する構造に基づいています。これらのプロシージャは型安全に定義され、入出力それぞれに厳密な型を与えることができます。これによって、受け渡されるデータが常に期待通りの型を保つため、エラーを未然に防げます。

以下は簡単なtRPCの例です:


import { createRouter } from '@trpc/server';
import { TRPCResponse } from '@trpc/server';

const router = createRouter()
  .query('getHello', {
    input: String,
    resolve: async ({ input }) => {
      return `Hello, ${input}!`;
    },
  });

export type AppRouter = typeof router;

ここでは、「getHello」という名前のプロシージャを定義し、文字列型の入力を受け取り、文字列型の結果を返すようになっています。「createRouter」という関数で新たなtRPCルーターを作成し、「query」メソッドで新規のプロシージャを指定しています。

tRPCの大きな強みは、サーバー側だけでなくクライアント側でも型を厳密に扱えることです。以下はtRPCクライアントから「getHello」プロシージャを呼び出す例です:


import { createTRPCClient } from '@trpc/client';
import { AppRouter } from './server';

const client = createTRPCClient<AppRouter>({
  url: 'http://localhost:3000/api/trpc',
});

async function getHello(name: string) {
  const res = await client.query('getHello', name);
  console.log(res.data); // "Hello, name!"
}

このように、クライアント側でも型を意識してデータを受け取れるため、開発段階から型の不一致やエラーを防ぎやすくなります。

次章では、RESTについてさらに掘り下げ、tRPCとの比較を検討します。

コードを読み解く:RESTが担うウェブ通信の役割

ソフトウェアの世界では、REST(Representational State Transfer)と呼ばれるシステムアーキテクチャが存在し、ウェブサービスの標準的な構築手法として広く浸透しています。RESTの基本思想は、特定の制約を満たすことで、スケーラブルでステートレス、キャッシュ可能なクライアント-サーバーモデルを実現するところにあります。モバイルアプリやSNS、ビジネスプロセスの自動化など、多様な分野で利用されているのが特徴です。

RESTという名称は、ロイ・フィールディングが博士論文で説いたウェブの拡張性向上のための概念に由来しています。リソースをURLで一意に識別し、GET、POST、PUT、DELETEなどのHTTP標準操作で取り扱うというシンプルな方法が強みです。

RESTの仕組みを紐解く:

1. エンティティとURI: RESTでは、あらゆる識別可能な対象を「リソース」と見なし、それぞれを一意のURI(通常はURL)によって識別します。例えばブログ管理システムであれば、ユーザーや投稿、コメントなどがそれぞれにURIを持ちます。


http
GET /users/123
GET /posts/456
GET /posts/789

2. HTTP操作: RESTは、HTTPの基本操作(GET、POST、PUT、DELETEなど)を用いてリソースに対する操作を行います。


http
POST /users
PUT /users/123
DELETE /posts/456

3. ステートレス: RESTでは、クライアントとサーバーのやり取りは常に自己完結的であるべきとされています。サーバー側にクライアント特有の情報を保持しないため、サーバーの実装がシンプルになり、拡張性も向上します。

4. レスポンスのキャッシュ: サーバーからのレスポンスは、クライアント側などでキャッシュできることが原則として推奨されています。これにより通信回数を減らし、効率的な運用を可能にします。

5. クライアント-サーバーモデル: RESTは、ユーザーインターフェイスなどはクライアントが担い、その背後でリソースの取得や操作がサーバーによって行われるという分業モデルを推奨しています。

RESTはシンプルで拡張性が高い一方、データ量が多い場合に冗長になりがちで、即時通信には向いていないという課題もあります。そこを補う新たなアプローチの一つとして注目されているのがtRPCです。

次章では、tRPCとRESTをより具体的に比較し、両者の特徴や適用シーンを探っていきます。

激突する二大勢力:tRPC vs RESTの比較分析

ウェブサービスの世界において、tRPCとRESTは大きな存在感を放ち、それぞれが独自の強みを活かして運用されています。本章では、tRPCとRESTの相違点と共通点を掘り下げ、さまざまな観点から比較していきます。

1. データ形式の選択

RESTでは主にJSON形式を用います。JSONはコンパクトで人間にも読み書きしやすく、機械的な処理も比較的容易です。


{
  "firstName": "John",
  "lastName": "Doe"
}

一方、tRPCはGoogleが開発したバイナリシリアライズプロトコルであるProtocol Buffers(protobuf)を採用することが多いです。protobufはプラットフォームや言語に依存せず、データをコンパクトに扱える利点があります。


message Person {
  required string firstName = 1;
  required string lastName = 2;
}

2. 通信プロトコル

RESTは主にHTTP/1.1でやり取りし、ステートレスでキャッシュ可能な通信を行います。tRPCはHTTP/2の採用を前提としている場合が多く、バイナリ伝送や複数ストリームを同時に扱えるといったメリットがあります。

3. API設計のアプローチ

RESTはリソースを中心にAPIを設計し、URLとHTTPメソッドの組み合わせで操作を表現します。


http
GET /users/123

tRPCはサービス指向の考え方で、.protoファイルなどに関数(サービス)を定義し、それに従ってRPC通信を行うように構成します。


service UserService {
  rpc GetUser (GetUserRequest) returns (User) {}
}

4. エラーハンドリング

RESTではHTTPステータスコードを用いてエラーを表現します。非常に多くの種類があり、細かい制御が可能です。


http
HTTP/1.1 404 Not Found

一方のtRPCはgRPCスタイルのステータスコードを用いることが一般的で、よりシンプルで特化したエラーコード体系を備えています。


rpc GetUser (GetUserRequest) returns (User) {
  option (google.api.http) = {
    get: "/v1/users/{user_id}"
  };
}

5. パフォーマンス

tRPCはHTTP/2とバイナリ形式の活用により、高速な通信が期待できます。ただし小規模なアプリでは、その差があまり顕著に現れない場合もあります。

6. 互換性

RESTはHTTP/1.1を広く活用するため、ほぼすべてのブラウザとサーバーで動作しやすい強みがあります。一方でtRPCはHTTP/2が必須となることが多く、まだ対応が限られるプラットフォームもある点に注意が必要です。

総じて、tRPCとRESTはそれぞれ異なる利点と制約を持っています。選択はアプリの要件に左右されるため、最適な手段を見極めることが重要です。次章ではtRPCとRESTの利点・欠点をさらに深く掘り下げます。

バランスを取る:tRPCとRESTの長所と短所

ウェブサービスの構築でtRPCとRESTを使い分ける際、両者の特徴を正しく理解しておくことが大切です。それぞれに強みと弱みがあり、アプリの要件に合わせて最適な選択を行う必要があります。本節ではtRPCとRESTそれぞれのメリットとデメリットを解説します。

tRPC:メリット

1. 型安全性: tRPCの最大の特徴は型に重点を置いている点です。送受信するデータをコンパイル段階でチェックできるため、実行時のエラーを減らし、アプリの信頼性を高めやすいです。


// tRPCの例
import { createRouter } from '@trpc/server';
import { z } from 'zod';

const router = createRouter()
  .query('getPost', {
    input: z.object({
      id: z.string(),
    }),
    resolve({ input }) {
      return getPost(input.id);
    },
  });

ここではgetPostクエリが文字列型のidを受け取るように定義されており、別の型の場合はコンパイルエラーになります。

2. 高い効率性: tRPCはProtocol Buffersのようなバイナリ形式を用いるため、JSON(RESTで一般的に使用)と比較して通信量や速度で優位に立てる場合があります。

3. 双方向通信: tRPCはRESTと異なり、双方向の通信を実現できます。サーバー側からクライアントへ即時に通知を送るようなユースケースにも対応しやすいです。

tRPC:デメリット

1. 複雑さ: RESTと比べると学習コストが高く、gRPCやProtocol Buffersなど基盤となる技術への理解が求められます。

2. ブラウザ対応: すべてのブラウザでネイティブに対応しているわけではないため、ポリフィルなどを導入する必要がある場合があります。

REST:メリット

1. シンプルな構造: RESTはHTTPメソッド(GET、POST、PUT、DELETE)やステータスコードなど、開発者に馴染み深い仕組みを利用しているため、比較的わかりやすく実装可能です。


// RESTの例
app.get('/posts/:id', function (req, res) {
  res.send(getPost(req.params.id));
});

上記の例では、特定の投稿IDに紐づくデータをGETリクエストで取得しています。

2. 幅広いサポート: すべてのブラウザや多数のプログラミング言語でネイティブに扱える点は大きな強みです。

3. ステートレス: 1回のリクエストに必要な情報を全部含めることで、サーバーがクライアント固有の状態を持たない仕組みを取りやすく、スケールアウトにも向いています。

REST:デメリット

1. データ取得の効率: RESTでは過剰にデータを取得してしまう(over-fetching)または必要なデータをまとめて取りきれない(under-fetching)問題が起きる可能性があります。

2. 即時更新が苦手: RESTはステートレスな分、サーバーからのプッシュ通知がなく、即時更新が必要な場面では不向きなことがあります。

このように、tRPCとRESTはそれぞれ異なる強みと弱みを持っています。アプリケーションの要件に応じてどちらが適しているかを見極めることが大切です。次章では、いくつかのケーススタディを通じて選択のポイントを考察します。

アプリ要件を見極める:tRPCかRESTか?

ウェブサービスの開発では、状況に応じてtRPCとRESTどちらを選ぶかが重要な検討事項です。それぞれの特性を踏まえ、いくつかの代表的なケースを見ながら最適な選択肢を考えてみます。

1. 即時性が高いアプリ

リアルタイムでデータ更新が必要になるアプリには、双方向ストリーミングが可能なtRPCが向いています。動画配信やチャット、オンラインゲームなど、継続的にデータのやり取りが行われるユースケースで力を発揮します。


import asyncio
from trpc.server import TRPCServer

class MyAppServer(TRPCServer):
    async def continuousStream(self, request):
        while True:
            await asyncio.sleep(1)
            yield 'Hello, World!'

myserver = MyAppServer()
myserver.activate()

RESTはステートレスで、双方向通信を想定していないため、リアルタイム性が求められるアプリには向いていないことが多いです。

2. マイクロサービス構成

マイクロサービスにおいては、サービス間通信の複雑さや要件によって選択が分かれます。シンプルなCRUD中心のサービスであればRESTが扱いやすいですが、双方向通信が必要だったり複雑なデータ型を扱う場合はtRPCが優位になります。


app.get('/users/:id', function (req, res) {
  res.send('User ' + req.params.id)
})

tRPCはストリーミングや型安全性を生かして、複数のサービス間をスムーズにつなぐケースにも対応しやすいです。

3. 大規模データ

tRPCのストリーミング機能は、大量データを一度に送らずストリームで効率よく処理できるため、大規模データの取り扱いに向いています。


import trpc
from trpc import TRPCServer

class MyAppServer(TRPCServer):
    async def bulky_data(self, request):
        for i in range(1000000):
            yield i

myserver = MyAppServer()
myserver.activate()

RESTでは一度にすべてのデータを返す方式が一般的で、大量データの場合はネットワークや処理の負荷が高くなりがちです。

4. API設計

外部公開されるAPIを設計する場合、HTTPメソッドに準拠したRESTのほうが利用者にとって分かりやすいことが多いです。また、REST向けの設計・テストツールが成熟しているのも利点です。


app.post('/api/users', function (req, res) {
  res.status(201).send('User created')
})

一方、tRPCはまだエコシステムが発展途上という面もありますが、あくまでも内部APIや大規模システムでの効率・柔軟性を重視する場合には有力な候補になります。

このように、tRPCとRESTのどちらを選ぶべきかは、アプリケーションの要件や実装規模により変わります。双方の強みと制約を理解し、最適な選択を行うことが大切です。

未来を展望する:tRPCとRESTはどこへ向かう?

ウェブサービスの世界は今後も進化を続け、tRPCとRESTもそれぞれの分野で新たな可能性を拓いていくと考えられます。ここでは、その将来像をざっくりと展望してみます。

1. tRPCの今後

tRPCは比較的新しい技術ですが、型安全性や簡潔なコーディング体験など魅力的な要素を備えています。開発者がその利点を理解し普及が進めば、さまざまなライブラリやフレームワークとの連携がさらに進む可能性があります。


import {createRouter, tRPCClient} from '@trpc/client'
import {AppRouter} from './server'

const client = tRPCClient.create<AppRouter>({
  url: 'http://localhost:3000/api/trpc',
});

上記のようにシンプルにクライアントを設定できる利点は、より多くのプロジェクトで採用されやすい要因となるでしょう。

将来的にはtRPCが主流になり、さらに豊富なライブラリやツールが揃うことで、導入しやすさも向上する可能性があります。

2. RESTの今後

一方でRESTは長年にわたりウェブ開発の中心的存在でした。シンプルでスケーラブルという強みはこれからも評価され続けるでしょう。


fetch('https://api.example.com/users', {
  method: 'GET',
  headers: {
    'Content-Type': 'application/json'
  }
})
.then(response => response.json())
.then(data => console.log(data));

上記のようにFetch APIで簡単に扱える利便性は、多くの開発者にとって魅力的です。今後はリアルタイム機能の拡張や、データ転送効率を高める仕組みの導入など、新たな方向で発展していく可能性があります。

3. tRPCとRESTの将来比較

Feature tRPC REST
即時更新 Yes No
型安全性 Yes No
シンプルさ 高い 高い
スケーラビリティ 高い 高い

上表のように、リアルタイム性と型安全性を持つtRPCは将来的に注目が集まる可能性がありますが、RESTのシンプルさや成熟度も依然として魅力的です。

4. 結論

最終的に、tRPCとRESTはどちらもウェブ開発の重要な選択肢として残り続けるでしょう。RESTはこれまで培われた実績と使用例の多さから安定した選択肢となり、tRPCは型安全かつ即時性の高い通信が求められる分野でさらに存在感を高めると考えられます。プロジェクトの要件に合わせ、両者の特性を的確に把握して選択することが大切です。

ウェブサービスの未来を見据えると、tRPCとRESTはいずれも主要な役割を担い続けるでしょう。スケーラブルなウェブアプリを構築したい開発者や、効率的な通信を求める企業にとって、それぞれの技術の特性を理解することが今後ますます重要となります。

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更新日:
February 25, 2025
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